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「マッチョと亡霊」と

桑折 現 「マッチョと亡霊」2025|@水性(suisei)  撮影:前澤 秀登 Hideto Maezawa
__ 
今回は俳優の桑折現さんにお話を伺います。桑折さんは現在、5人の様々な演出家と1年間を通して新作の1人舞台を作るという非常に挑戦的な企画に取り組んでおられますね。その第一作目である「マッチョと亡霊」(作・演出 西田悠哉さん)は今年の5月に初演され、また10月にも再演されるということですね。私も拝見しまして、大変面白かったです。
桑折 
ありがとうございます。
__ 
まずタイトルから力強く独立性の高いテーマを感じました。それ以上に集中して見られる70分のお芝居で、大変な見ごたえがありました。まず伺いたいのですが、この戯曲は西田さんが完全に書き上げてから稽古場に持ち込まれたのでしょうか。それとも、稽古の中で作っていったのでしょうか。
桑折 
どちらかというと、稽古の中で作っていきました。初対面で一緒に作品を作る機会でしたので、試しながら徐々に稽古を重ね、台本を仕上げてもらっていった形です。
__ 
最初の1ページ目が稽古場に持ち込まれた時はどんな印象でしたか?
桑折 
まず西田君自身も一人芝居を作るのは初めてかつ、初めて一緒にやる俳優と作るというのは難しい面もあったと思います。さらに、桑折現という俳優個人のパーソナリティを深く知らない段階で書かなければいけないという状況でした。西田君自身も「当て書きしていくこともある」と言っていたので、この俳優をどの角度でどう切り取るのかという点が、あの最初の1ページに表れていたと思います。「こう来たか」という、作品にワクワクするような印象でした。
__ 
そうなんですね。
桑折 
そして、シンプルに面白い!と思いました。自分がどう演じるかは一旦置いておいて、作品がとても楽しみになりました。
__ 
私も、最初のセリフが「モテるモテない」という切り口だったので、一気に期待が高まりました。5作品の1作目にこの話をするんだ、と。男性同士のクローズドな関係で打ち明け話をするような気配を感じ、すごく面白かったです。そこから主人公の男性が自分の過去を振り返り、人生の分岐点や選択の中で葛藤する様子が主に描かれた作品。「自分はこうだった」「こうではない」と言い聞かせながら、本当の自分から目を背けて「男になっていく」ような感じが私個人の経験と重なり身につまされました。
桑折 
おっしゃる通り、そういう部分が物語の重要な要素だったと思います。自律的な、積極的な選択ではない中で、ある種の男らしさやマッチョイズムが形成されていく。それとどう付き合っていくかは人それぞれですが、登場人物はあのような形になっていった。それをお客さんには様々な感じ方で見ていただきたかったので、おっしゃるような部分を面白がっていただけたのは、とても嬉しいです。
__ 
やはりマッチョイズムというのは、結局は他人を指導したり、先輩に良い顔をしたりするような縦社会の中で同一性を感じることですよね。そうしたところがあります。一体感はあるけれど、個人の自己効力感との葛藤があります。このマッチョイズムを演じるにあたり、ご自身の葛藤を思い出すようなことはありませんでしたか。
桑折 
ええ、ありました。幼少期から思春期の頃のことも思い出しますし、パンフレットにも書きましたが、今、私が父親であることで、家族というコミュニティの中での男性性も感じます。
__ 
そうですね。
桑折 
あらゆる面で、自分が男性であること、男性とはどういうことなのか、といった自分にこびりついている様々なものを改めて自覚させられましたね。私も体育会系の部活をやっていた時期があるので。演劇もやはり体育会系的な要素がありますよね。昔に遡れば遡るほど、そういう要素が強かったように思います。今は様々な方向に配慮していこうという風潮になってきていますが。
__ 
やはり無自覚に自分を男性として扱ったり、女性に対してもそういうフィルターができてしまったりする。分かりやすい言葉で言うと男尊女卑ではないですが、そういう価値観が道具としてではなく、身についてしまっているというか。
当ページの画像クレジット

メイン画像:撮影:Keisuke NAGAHARA
ギャラリー画像1~2枚目:「マッチョと亡霊」2025|@旧宮島村役場  撮影:Keisuke NAGAHARA
ギャラリー画像3~6枚目:「Before boiling」2025|@THEATER E9 KYOTO  撮影:Kim Sajik

一人の俳優のための五人の演出家による上演

この企画はタイトルの通り、「1人の俳優により上演する作品を5人の作家/演出家がそれぞれ新たに創作する」プロジェクトです。
京都、松本、富山、東京の4都市で上演を行い、5作品×4都市=20公演、合計50回(1作品×10上演)の上演を1年かけて実施致します。
企画の発起人であり、出演者となる俳優は桑折 現(こおり・げん)。
学生時代より長らく京都を拠点に俳優、演出家として創作表現活動を行い、2022年より富山県に移住。以降も俳優として、多彩な作品で地域を越えて創作の場を広げています。企画に賛同し参加を快諾した演出家5人も、それぞれに舞台芸術、現代美術の第一線で活躍する錚々たる顔ぶれが揃いました。

「マッチョと亡霊」作・演出 西田 悠哉 出演 桑折 現

「1人の俳優のための5人の演出家による上演」 第一作品。
今、最注目の作家・演出家である西田悠哉(劇団不労社)にとって初の一人芝居となった書き下ろし作品です。
【京都】公演期間:2025/05/10~05/11。会場:THEATRE E9 KYOTO。
【東京】公演期間:2025/05/19~05/20。会場:水性。
【松本】公演期間:2025/05/23。会場:まつもと市民芸術館 小ホール。
【富山】公演期間:2025/05/31~06/01。会場:旧宮島村役場。
【金沢】公演期間:2025/10/17~10/18。会場:ギャラリー・ケアリング。

些細な・・・

桑折 現 「マッチョと亡霊」2025|@旧宮島村役場  撮影:Keisuke NAGAHARA
__ 
無自覚なマッチョイズムを令和の時代に捉え直すという点で、非常に挑戦的な作品でもあったと思います。
桑折 
そうですね。終演後のお客様のコメントで、何人か同じようなことをおっしゃっていたのですが、女性の観客の方から、男性が男性性をこのように扱うというのは珍しいね、と言われました。女性側からの「抵抗」としての、時には暴力性を含めた男性性を取り扱う作品はあるけれども、男性が男性性を自ら取り扱うのは非常に興味深い、と。あらためて言われると確かそうかもしれない、とその時に思いました。
__ 
あまり、男が男を振り返り直すようなことはない気もしますね。扱ってもギャグやお笑い範疇で表現・評価することが多いと思います。
桑折 
そうなんですよね。もちろん、これまでもそこに自覚的な作品はあったと思いますが、このような手つきで主題に持ってきたのは珍しいと私も感じます。
__ 
ありがとうございます。さて、ラストシーンについても少し伺えればと思います。男らしさからの解放と退場、というような終幕だと感じました。私としては、彼のそのよるべなさ、幽霊になってしまうほどの存在感が、ただただ美しかったなと。
桑折 
ありがとうございます。そうなんですね。
__ 
観客の反応として、他に印象に残ったものはありましたか。
桑折 
そのようによるべなさや美しさとして受け取っていただけたのはとても嬉しいです。一方で、「この後どう描くのか気になる」「ここから先をもう一つ見たい」というご意見も多かったです。たとえば自分の幼少期の頃の些細なことが、人にとっては記憶に残り続ける大切なことだったりもします。そこから、無意識のうちに無いものとして扱っていたことや、忘れてしまっていた大切なことに改めて気づき、取り戻した瞬間でもあったと思います。こびりついた男性性が剥がれ落ちた先に見えたものでもあったと思います。しかし、やはりそこから先が見たくなる気持ちも分かります。
__ 
事故をきっかけにベッドの上で自分の人生を振り返り、ほぼ完全に忘れていた昔の、自分の好きだったものを思い出す、というところですよね。確かに、その世界に入り込んでしまうと見えなくなってしまいますからね。
桑折 
そうなんですよね。物の見方や判断、物事の捉え方まで、その価値観のステレオタイプになってしまうことがあるじゃないですか。彼の例で言えば、女性の顔を「初めて見た」と最後に言うように、それまで人格として見ていなかった。そういうシーンがありましたけど、やはり世界が変わったんだと思います。同時に、世界の見方さえも固定化してしまう。そういう力が、植え付けられた価値観というもので作用するのだと考えさせられます。
__ 
男らしさの再定義や捉え直し、そして女性の方から見た男らしさの捉え直し、そんな機会を与えてくれる作品だったと思います。
桑折 
そうですね。何人かの女性が「男の人も大変なんですね」とおっしゃっていたんです。女性がこの作品をどう捉えるのか、正直怖くもあったのですが、概ね皆さん楽しんで観ていただけたことにほっとしていましたし、終わってみれば、女性の方がより客観的に楽しんで観てもらえた部分もあったのかなと感じました。同時に、先ほどの言葉を素直に受け取る以上に、何か引っ掛かりを覚えて、考えさせられる言葉だなとも感じました。今も考えさせられます。

沸騰

桑折 現 「Before boiling」2025|@水性(suisei)  撮影:Keisuke NAGAHARA
__ 
次に前田耕平さんと製作された「Before boiling」について伺わせていただければと思います。こちらは今年8月が初演でしたね。タイトル、「茹でられる前」という意味なんでしょうか。
桑折 
「沸騰する前」という捉え方をしていました。
__ 
ああ、沸騰する前。大変面白く拝見して、それ以上にこの作品の成り立ち方に興味を覚えました。こちらも脚本が最初からあったわけではなく、二人で作られたというイメージでしょうか。
桑折 
そうですね。対話の中で要素が生まれてきて、それをどう作品化していくかという時に、色々なものが同時に出来上がっていった感じです。いわゆるテキストと呼ばれるものは、最終的に前田君が構成してくれました。ただ、作家が一人で書いた台本があって、それをやるというよりは、テキストも喋りながら書いていったり、「ここは言わない方がいい」「この言い回しにした方がいい」といったことをやりながら作っていきました。
__ 
大胆な客ぶりや、お客さんとの掛け合いなどもあり、刺激的な時間でした。
桑折 
ありがとうございます。
__ 
プロジェクターで映っていたのが写真ではなく動画で、その動画の中のお子さんとセリフを続けていくという点で、全てリアルタイムで起こっているような感覚があり、目撃していることが面白かったです。
桑折 
現代美術の作家である前田君は舞台作品を初めて作ったので、いわゆる演劇的にフィクションを立ち上げることは選択しませんでした。どちらかというと、「地続きに桑折自身が舞台に出てきて、桑折が喋っているようにしてほしい」という演出でした。その境界を薄めたい、と。僕がセリフを喋るようにではなく、普段の自分が喋るように、俳優としてではなく桑折現が喋るようにしてほしい、というオファーでした。ある種の生々しさが出れば出るほど、後半でそれがひっくり返り、子供との対話になって崩れていった時に、その強度が増すという構造になっていたと思います。
__ 
その崩れていった時の桑折さんのリアルな、取り繕わない言葉が、共感というか、「ここまで言えたらすごいな」という感覚がありました。構造的で面白い作品ですが、その構造が、父親という存在の弱さや頼りなさをダイレクトに感じさせ、とても面白かったです。
桑折 
そうですね。「マッチョと亡霊」と共通項がいくつかあるんですよね。前作は男性性、今作は父性が一つのテーマになっているので、どうしても近い部分があります。
__ 
重なり合う部分。「Before boiling」は、ある種の思想というか、信じているものがあって、それが子供の純粋な視点からの残酷な問いかけによって、もう一度問われ直していくという作品でした。「なぜ人を殺してはいけないの?」「なぜ盗んではいけないの?」といった罪やモラルに関する厳しい問いかけもありましたね。結局は、自分の家族といった主観的な軸が、大義よりも先にきてしまう。絶対的な何かを示すことができない、という点が「マッチョと亡霊」にも通底するテーマや描き方だったのかなと思っていて、この二つは私の中でセットで思い出されることが多いです。この作品を通して、桑折さんご自身の中で見えてきたものや気づきはありましたか。
桑折 
まず俳優としての作業がすごく面白かったです。普通の演劇とは違う、「状態」のあり方が問われる作品でした。フィクションを纏ってはいるのですが、舞台に立つ時点ではある種の開かれた状態というか、自分であることと役割を担うことをできるだけ同一化していく作業をしました。あとは、最後の状態に持っていく時に、繰り返しているとどうしても予定調和になっていく部分があるんですよね。それが、いかにそうならずに、本当にリアルに自分が子供の問いかけにくらっていくか、ということが大事で。本当に揺さぶられるために、自分の中の仕掛けをどう作るかが演技プランになる、いわゆるトリガーを自分で埋めておく、という作業がありました。それがすごく面白い気づきでもありました。私は京都造形大学の映像・舞台芸術学科出身で、太田省吾さんが学科長だった時代です。
__ 
2001年ですね。
桑折 
そうです。いわゆる前衛的だったり、先鋭的だったりする表現。様々な演劇の形はありますが、演劇らしさや劇的なものを一度疑ってみるという思想がありました。ですが、色々な舞台を経験する中で、いつのまにか自分の舞台芸術への眼差し、演技への捉え方がどこかで固定化されていった時期があったと感じています。それが、「Before boiling」で一度崩された部分、もう一度気づかされた、思い出させられた、ということがあって。それが自分にとって収穫でした。俳優としても、一表現者としても。それが現代美術作家の演出家によって、もう一度そこに気づかされるというのは、なんというか・・・。
__ 
収穫ですね。
桑折 
そう、そうか、と思いながら。もう一度そこに立ち戻れたのは良かったなと思っています。先ほどの質問にも繋がりますが、自分自身にいつの間にかこびり付いたり、信じてしまっている価値観、自分を自分たらしめるものとは何か?そのことに自覚的にならざるを得ない2作品でした。ぼくはこの歳になり、逆にどんどん「自分」というものへの執着が薄くなっているような感覚もあります。でも、同時に絶対的に私という「個」でもある。そこにある外部性と固有性の入り組んだダイナミズムのようなものに自分は面白さを感じているということも気づきました。同時に、それは俳優としても大事な感覚だとも思いました。それらのことに気づけたこともよかったです。
「Before boiling」作・演出 前田 耕平 出演 桑折 現

「1人の俳優のための5人の演出家による上演」2作品目。
現代美術のフィールドで活躍する注目のアーティスト前田耕平が初めて舞台作品の演出を手がけます。
自然と人の関係性を子どものような純粋性と狂気を共存させた視点で見つめ、これまでに自身の身体性に連動した作品を多く発表してきました。
アーティスト・前田耕平が俳優をいかに扱い、どのような舞台作品を手がけるのかご期待ください。
【京都】公演期間:2025/08/02~08/03。会場:THEATRE E9 KYOTO。
【松本】公演期間:2025/08/07~08/08。会場:マツモトアートセンターGALLERY。
【東京】公演期間:2025/08/19~08/20。会場:水性。
【富山】公演期間:2025/08/23~08/24。会場:旧宮島村役場。

質問 山本真央さんから桑折現さんへ

__ 
ええと、毎回させていただいているのですが、前回インタビューさせていただいた方からの質問をいただいております。前回は創造Streetという大阪の演劇集団の山本真央さんという俳優の方からです。「自分の言葉を手に入れたと思ったのは何歳ですか?」という、少し抽象的な質問です。山本さんは、母親と喧嘩した時に、自分の言葉で自分の考えていることを説明できた時だそうです。
桑折 
うーん。いや、難しいなと思って。
__ 
難しい質問ですよね。
桑折 
でも、深い質問ですね。自分の言葉。まだないんじゃないでしょうか。分からない。難しい。自分の言葉。そう思えた瞬間ですかね。幼稚園の頃だった気もしますね。気になる子に自分から声をかけた時のような。他者に自分から何かを伝えたいと思った記憶が幼稚園の時になんとなくあって、その時喋っていた言葉は、自分から発した言葉で人を動かしたい、相手に影響を与えたいと思った、ということではそんな気がします。もっと違う捉え方をすると、ほとんどの言葉は与えられているもの、使わせてもらっているものだという感覚もあるので。なんか、自分の言葉ってなんだろうな、と。

「見てしまう人」

桑折 現 1人の俳優のための5人の演出家による上演Ⅲ「桑折 現/ダンス_中継」宣材写真
__ 
インタビューも後半に差し掛かってきましたので、今後のことなども伺えればと思います。よろしくお願いします。
桑折 
はい、お願いします。
__ 
次の倉田翠さんとの「桑折現/ダンス_中継」、11月8日から9日の京都公演が初演ですね。この作品は一体どんなものになりそうか、意気込みや現時点で話せることを伺いたいです。
桑折 
本格的なクリエーションはこれからなので、現時点で話せることはあまりないのですが、倉田さんがチラシやウェブに載せている文章があります。彼女はあくまで「ダンス」として作品を提示しようとしています。私はダンス作品を演出したことはありますが、自身ではダンス経験がありません。<dots>という集団で作品制作していた時も、振付は別のメンバーが担当していました。今回の作品では、中年の40代の俳優でありダンス経験の無い私の身体で、いかにダンスを立ち上げるか。そこは一つのポイントになるとは思いますが、それで作品になるわけではない。では、何をもって作品になり得るのか。そこは倉田翠なので、きっと思いも寄らない成立のさせ方をしてくれるのではないか、と私自身も期待しています。それと、「ダンス」というものが内包しているある種の懐の広さを新しく示してくれるような作品になるのではないかと考えています。
__ 
難しい言い方ですね。人の肉体が立っていて、演劇だと論理やストーリーという言葉の手助けがありますが、ダンスの場合は必ずしもそれが主眼ではなく、肉体から広がる何か、時系列に縛られない、ある種の重力や重みのようなものが主軸になる、と私は勝手に解釈しています。その成り立ちが新しく示されるようなイメージで伺っていました。
桑折 
そうですね。それは間違いではないと思います。ウェブサイトの倉田作品ページに、「私はダンス作品を作る人間として・・・」という文章が掲載されています。
__ 
「私はダンス作品を作る人間として、自分にとってダンスとは何かということを考え続けてきたと思っていますが・・・」。ここですね。
桑折 
そうですね。この文章が今あるヒントです、私にとっても(笑。
__ 
目の前の舞台にある一つの体から、共通点なのか、際なのか分かりませんが、繋がれている部分。まずは桑折さんの肉体から生まれるダンスが何なのかをゆっくり考えていく、味わうところから始まりそうですね。
桑折 
そうですね。演劇は言葉があり、言葉で与えられる意味や繋がりがあります。倉田さんの場合も喋る可能性は十分あると思いますが、やはりその場に立って観客に向かい合う、一人の生きている人間が生きている観客と向かい合うところから始まるのだと思います。ここからどういう関係性を作っていけるか、というところが私としてはポイントになってくるのかなと、今は思っています。彼女の言うダンスに近づくための、今自分なりに思うポイントというのは、他者と自分というものをどう関係作っていくか、ということかなと思います。ダンスの説明って難しいですね(笑)。
__ 
難しいですね。
桑折 
この企画の一つのテーマでもあるのですが、俳優として「見てしまう人」っているじゃないですか。目がいってしまう人。見続けられる人と見続けられない人がいて、この「見続けられる」とは何なのか、ということは私にとって一つの問い、テーマとしてあります。そこにすごくダイレクトに繋がるだろうなと思っています。
__ 
見続けられることに耐えうる体、ですね。
桑折 
「身体」とか「存在」とは何なのか、舞台上では何によってそれが担保されるのか、ということだと思います。すみません、ものすごく抽象的な言葉にしか、なってない気はするのですが。
__ 
いえ、大丈夫です。
桑折 
良い俳優さんや良いダンサー、パフォーマーは、やはりそれぞれにその魅力を持っていますよね。
「桑折 現/ダンス_中継」演出・構成・振付 倉田 翠 出演 桑折 現

「1人の俳優のための5人の演出家による上演」第二作品。
現代美術のフィールドで活躍する注目のアーティスト前田耕平が初めて舞台作品の演出を手がけました。
【京都】公演期間:2025/11/08~11/09。会場:THEATRE E9 KYOTO。
【松本】公演期間:2025/11/18。会場:まつもと市民芸術館 小ホール。
【富山】公演期間:2025/11/22~11/23。会場:旧宮島村役場。
【東京】公演期間:2025/11/26~11/27。会場:水性。

一つ一つ

桑折 現 「Before boiling」2025|@水性(suisei)  撮影:Keisuke NAGAHARA
__ 
残り3作品の上演と、「マッチョと亡霊」は再演も予定されていますが、今後のこの企画への意気込みを教えていただけますでしょうか。
桑折 
一つ一つの作品をしっかりと大事に作り、滞りなく上演していくことに、今この一年は一番重きを置いています。シンプルなことで、作品を作ってお客様に観ていただき、観ていただいた方々に何かしら良い影響を及ぼせたら、それが一番嬉しいです。そのことを舞台芸術というものに対して真摯に向き合いながらやっていきたいなと思っています。自分としても、もう一度舞台芸術に向き合い直しているような日々です。真面目な答えになってしまいましたね。
__ 
いえ、大丈夫です。様々な土地での公演、松本公演、富山公演と好評を得て、非常に実りある企画のようで素晴らしいと思います。初演は全て京都公演なので、個人的には京都に住んでいて得したなと思います。
桑折 
ありがとうございます。ただ、上演すればするほど変わっていく、進化していく部分もあるので。京都で見てくださったお客様には、また見てもらいたいなといつも思っていたりもします。もちろん、最初ならではの良さもありますし。それらは舞台の宿命なのですが。
__ 
慣れてくる部分と、慣れていないからこそ出てくる味わいもありますしね。さて、最初の二作品は父性と男性性という重なり合うテーマで本質を射る作品でしたが、これから別の演出家の方々とどのようなラインナップを展開されるのかもワクワクしますね。
桑折 
いや、本当に私自身もワクワクしています。怖さもありますが、とても贅沢に、豊かな経験をさせていただいています。
__ 
承知いたしました。ありがとうございます。最後に何か宣伝したいことなどがあれば。
桑折 
ありがとうございます。10月3日~11月30日の期間にクラウドファンディングをさせていただくことになりました。この企画を始めるにあたり経済的に厳しいことは覚悟の上でした。また色々な部分でコストダウンをしている企画ではあります。ですが、いざ走り始めると、どうしても色々な部分で無理が出てきています。最後の公演まで走り抜くためにも必要だと判断し準備してきました。ご支援いただければ幸いです。ですが、一番は作品を観ていただきたいです。ぜひ会場まで足を運んで、本番を観に来てもらえたら嬉しいです。
__ 
今日はありがとうございました!
1人の舞台俳優と5人の演出家による4都市50公演の挑戦(1人の俳優のための5人の演出家による上演 2025/10/03 公開) - クラウドファンディング READYFOR

■概要

俳優・桑折 現が5人の演出家と1年かけて5つの新作を創作し、京都・松本・富山・東京で計50回上演するプロジェクトです。

期間 : 2025年3月~2026年3月(1年間)
作品数 : 5作品
総公演回数 : 50回(1作品あたり4都市で計10回公演 × 5作品)

ーーーこのプロジェクトで上演する作品の条件ーーー
・新作であること
・俳優1人のみが出演
・舞台照明と音響は基本的に使用しない(俳優が自分で操作できる範囲内で行う)
・上演時間は50分~60分程度

この条件のもとで作品をつくり、各地で公演を行なっております。

(インタビュー終了)