猫ちゃんとの時間

- __
- 今日は喜劇結社バキュン!ズの内藤彰子さんにお話しを伺います。どうぞよろしくお願いいたします。内藤さんは最近どんな感じでしょうか?
- 内藤
- よろしくお願いします。そうですね。ここ最近舞台が結構立て続けにあったんですけど、それがようやく一区切りつきました。ちょっとした夏休みみたいな感覚です。
- __
- お疲れ様でした。演劇以外では、例えば猫ちゃんとの暮らしについてなども伺ってもいいでしょうか?
- 内藤
- はい、私、猫ちゃん一匹と暮らしてるんですけど元々は保護猫で、一目惚れして飼うことになったんです。稽古が終わった後に癒やされるみたいな感じですね。
- __
- どんな遊びをするんですか?
- 内藤
- 影が好きで、床に映る私の手の影を追いかけて遊んだりしますね。 それがものすごく可愛くて。いつもそんなふうに遊んで癒やされてます。
喜劇結社バキュン!ズ
スプーン曲げ子主宰/コメディを専門に関西で活動中の劇団。
(次回出演情報)海に遠吠え 第4回公演「光を編む」
日程 2025年10月31日(金)~11月3日(月) 会場 表現者工房 脚本・演出 夏井菜月(海に遠吠え) 出演 夏井菜月(海に遠吠え) きたにしてつや(ゆとりユーティリティ) 内藤彰子(喜劇結社バキュン!ズ) 七井悠(劇団飛び道具) 山本魚 吉田凪詐
人物像

- __
- ここ最近のご出演作、最近だとまど劇の「つきなみ」にご出演でしたよね。どんなご経験でしたか?
- 内藤
- ありがとうございます。にさわさんをはじめ、他の共演者の方たちも共演でご一緒するのは初めてだったんです。にさわさんからお声かけいただいて出演することになったんです。まど劇のコンセプトというか、とにかくみんなで楽しくやろうという雰囲気でした。雰囲気がずっとほんわかしていて、ほんとに劇中の高校生たちみたいな感じで。まず稽古は近況報告から始まって、最近何があった?とか話して、そこからゆるゆる稽古に入る、みたいな。そういう空気が心地よくて、本当に楽しかったです。
- __
- 共演者との関係のなかで生まれるものが、芝居の礎になってるみたいな感じもありましたか?
- 内藤
- 多分そうですね、集合してすぐ稽古というよりは、ゆるゆる雑談してから、じゃあ始めようかってなる。そういう座組の柔らかい空気や関係性が、作品にも反映されていた気がします。
- __
- お互いの人物像を馴染ませていくプロセスだったのかもしれませんね。「つきなみ」はどこかドキュメンタリーというかモノローグが大きな役割を果たしていたから、尚更その点が重視されていたのかも。ご自身としてはどんなことができましたか?
- 内藤
- 冒頭にせりふがなく身体で表現するシーンがあって、個人的にはそういう身体表現みたいなのがすごく苦手で大丈夫かなと思ってたんですけど。演出のにさわさんのスタイルが、「まずは一回やってみてください」という感じで。自分自身で考えてできそうな表現を取り入れながら試行錯誤しました。その中で「こう見せたらいい」みたいな感覚がどんどん分かってきたような気がして…今回を機に表現の幅が広がってたらいいなと思います。
目を見て

- __
- ひとつ前のご出演作は第九惑星の「SYNCHRONIZED ACTORS」でしたよね。ビルの中で死んだ幽霊の話というひとり芝居でしたね。こちらもどんなご経験でしたか?
- 内藤
- ひとり芝居自体はこれまでも何度かやってきたんですけど、30分の作品は初めてでした。30分間ずっとしゃべり続ける感じだったんですが、他の現場の稽古とも並行してやっていたので、できるかなと不安もありました。でも実際やってみると楽しくやれました。それこそ作演出のneco.さんと色々お喋りしながら作品づくりをして。おかげさまで良い経験になりました。
- __
- 何か課題や気付いたことはありましたか?
- 内藤
- 初めの方のシーンで客振りをしたんですが、お客さんの目を見て話すのが少し難しかったです。普段、人の目を見るのが苦手で。もっと柔軟にサービス精神みたいなのを持てたらよかったなと。役になりきると人を見やすいんですけど、自分に近い役だったのでちょっと苦手意識が出てしまい、前半部分は少し固くなった感じもありました。今後の課題かなと思います。
- __
- ありがとうございます。
「絶対そのうち誰か怪我する」

- __
- その一つ前は、喜劇結社バキュン!ズですよね。ABC春の文化祭の作品は拝見できなかったのですが、「絶対そのうち誰か怪我する」とても面白かったです。今日はその話を伺いたいです。
- 内藤
- 劇団として中之島春の文化祭に初めて出た時も、お客さんの反応がすごくて、わーっと笑い声が響いて。回を重ねるごとに、たくさんの方に観ていただけるようになって嬉しいです。バキュン!ズの台本はみんなの個性が活きるように宛て書きなんです。
- __
- そうだったんですね。キャラクター性を強調するようなイントネーションや言い回しが癖になるんですよね。それが積み重なって、独特の世界観が浮かび上がってくるような感じです。その秘密は何だろうとずっと思っていて。ナンセンスコメディだけど前衛芸術の演技スタイルを崩さないのが独特の劇空間を作ってるのかなと思います。確かな演技術で伝わる、整理されたオフロード。登場人物の4割がアウトローなのもあってか、目撃者になってしまった感がつきまとう。黙って行く末を見守るしかない。今回内藤さんは鳥かごの女役を演じられましたが気を付けたことはありますか?
- 内藤
- 右大臣の入った鳥かごの持ち手がすごく小さくて、ずっと持っていなきゃいけなくて指が痛かったことですね…!あとは、一人語り、モノローグを喋るシーンがあって、そこで笑いを取らないといけなかったので、緊張しました。ちょっとでも噛んだりするとウケが減っちゃうので、そこは気をつけてました。
- __
- ありがとうございます。稽古場の雰囲気はいかがですか?
- 内藤
- 基本的に台本は稽古毎に少しずつできあがっていって、稽古しながら出演者を見て宛て書きで書き足されていきます。読み合わせの段階からみんな大笑いしてて、さらに立ち稽古の中で「ここにもっとボケを入れたい」ってどんどん追加されていくこともあって、たまに収拾がつかなくなったり。台本が完成するのは本番直前になることがほとんどです。
- __
- そのさじ加減が面白いです。脚本・演出はスプーン曲げ子さんですね。先ほど「ナンセンスコメディ」と申し上げましたが、起こっている事件は途轍もなく下らないのに後半の盛り上がりは凄いんですよね。
- 内藤
- ありがとうございます。
- __
- バキュン!ズの団体のあらましをもう少し教えていただけないでしょうか。
- 内藤
- もともと難波のアカルスタジオで、スプーン曲げ子さんが毎月新作コメディを描いていて、公演ごとにオーディションでキャストを決めて上演してたんです。私もお笑いが好きということもあり出演させていただいていて、だんだん出演するメンバーが固定されてきて。コロナ禍の頃に「劇団にしようか」という話になって今の形になったと聞いてます。私自身は旗揚げメンバーじゃないんですが、1日だけずれたタイミングで合流しました。スプーン曲げ子さんから旗揚げ直後に誘われて、ぜひ入りたいと思って入りました。
本当なのかどうか分からない
- __
- 最近拝見した内藤さんのお芝居で、今日ぜひ伺いたかったのは努力クラブの「そして、ここからはミューズの街(『オフリミット』の改めたやつ)」でした。主役級のご出演でしたよね。絶望した西さんの生活に突如現れた彼の劇団の元ファン。
- 内藤
- はい、ありがたいことに大役をいただいて。「死ぬための旅をする」、そんな役どころでした。
- __
- でも、入水自殺する前日にどこかに行ってしまうという・・・。後半では妹を名乗る女が現れて、本当なのかどうかも分からない、森の中で停止した車の中で迷うという結末でしたね。
- 内藤
- どうなっちゃったんでしょうね。
- __
- 2時間弱のお芝居でしたが全然長さを感じませんでした。2人の旅の行方がとても気になりました。ご自身としては、どんな経験でしたか?
- 内藤
- ありがとうございます。重要な役だったので緊張もしましたが、私自身努力クラブさんのファンなので、また出演することができて嬉しかったです。頑張らないとなあと思って。しっかり役柄と向き合うぞと思って挑みました。
- __
- 西さんも凄かったですね。
- 内藤
- 本当ですね、2時間ずっと凄いスピードで全力で喋ってて、すごい存在感でした。
感覚を近づける

- __
- 芝居を作るなかで、話し合いによってお互いの人となりが分かったうえで、そこから物語が生まれていく。それは舞台と客席の間でも起こっていて、最初は観客もまだ観客じゃなく、だんだんと舞台上の世界に引き込まれていく。その過程で関係性が組み上がって、盛り上がりができていくんだと思います。物語のプロデュースとクリエイションが両輪となって、終盤のダイナミズムが生まれるのかなと思います。だから開始0分の時点で何も準備しなくていいかというとけしてそんなことはなくて、自己開示のレディネスが無ければ邂逅は遠のいてしまう。自分の人間性と与えられた役柄を理解し、相手のそれらも理解する・・・まあそれだけじゃもちろん上手くいかないと思いますが。
- 内藤
- でも相手を知るというのは必要ですね。対話をしてみるのは大事かなと思います。
- __
- ご自身が役と向き合う時は、どう捉えていますか?
- 内藤
- まず台本に目を通して、せりふのやりとりなどから相手との関係性などを考えたりします。その上で実際に稽古をしたときに相手のせりふを受けて、その場でリアクションを探していくというのが多いですね。
- __
- 特に印象に残った役作りや、自分との対話があった作品はありますか?
- 内藤
- どの作品の役でも、いつも自分の中でなんとなく対話しながら感覚的にやっている部分が多いのですが、この人はこういう人だな、というイメージをなんとなく自分の中で探っていきます。役と自分の感覚をすり合わせている感じです。
- __
- 役が感じる感覚と、自分のそれをすり合わせるんですね。しっかり定義することよりも、感覚を信じることかもしれませんね。
- 内藤
- そう思います。稽古開始当初は遠い感覚が、すり合わせていくうちにだんだんと分かってきたり、感じ方のタイミングも重なり合ってくるんだと思います。あえて言葉にするなら。
- __
- 一般の観客としては、論理的な面ではなく、舞台上で感じ取れる空気やリズムを楽しんでいるのかもしれません。
質問 武田暢輝さんから内藤彰子さんへ
自分以外になれるなら

- __
- 内藤さんは今後、どんな演技ができるようになりたいですか?
- 内藤
- 自分自身に自信がなくて、自分のことがすごく嫌いなんですけど、自分以外になれるなら何でもやりたい。自分じゃないものになれたら、すごく楽しいなと感じます。変身願望じゃないですけど、いろんな誰かになるということは、昔から憧れがありましたし、そのために表現の幅をもっと広げていきたいです。
- __
- 演劇を始めたきっかけは何だったんですか?
- 内藤
- 一番初めは高校の時に演劇部に入ったことでした。その頃から漠然と「自分じゃない誰かになりたい」という思いがあったんです。とても内気な性格で、あまりしゃべらない子だったんですが、役柄であれば話せたし、なりきれる感覚がありました。今でもそれは変わっていないと思います。自分を少しでも好きになれたらいいなと思うんですが、なかなか難しいですね。でも、これまでの経験や与えてもらった役を考えると、「こういう私だからこそ選んでもらえたのかな」と思うことも多くて、ありのままの自分も大事にしていきたいなと思っています。
- __
- 内藤さんは、とてもいい雰囲気を持っていらっしゃると思いますよ。
- 内藤
- ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。
のびーる!はみがきじゃらし

- __
- 今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントを持ってまいりました。
- 内藤
- ありがとうございます。
- __
- どうぞ、開けていただけますか?
- 内藤
- あ、可愛い!うちの猫ちゃん、猫じゃらし大好きなんで。嬉しいです。デンタルケアもできるし、またたびもついてるんですね。ありがとうございます、一緒に遊ぶのが楽しみです。めちゃくちゃ使わせていただきます。