方向性について

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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。
- 山本
- お願いします!
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- いきなりですが、山本さんはどんなキッカケでイッパイアンテナに。
- 山本
- まず、就活をする前に将来の事を考えてみたんですよ。真剣に。僕は世界に対して完璧主義というか、物事を始める時にその前提があるべきだと考えてしまうんですね。だから、舞台に立つ事なんて全ての人が当然持っている目標だと思っていて。何の疑いもなく。
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- なるほど。
- 山本
- 大学に入って、まずバンドを始めてみました。したら全然違うんですよ。純粋に音楽が上手くなりたい奴もいれば、目の前のお客さんを沸かせたい人もいる。ギターで派手なパフォーマンスをしたいのもいれば、舞台の内側だけで浸ってる奴もいる。本当に、色んな志向があるんですよ。
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- ああ、それは確かに・・・表現をアクティビティの一つとしてみた時に、志向の違いはあるかもしれませんね。
- 山本
- 僕は誰かの曲をやる時は、いわゆるカバーしたいんです。が、まんまコピーしたいという奴がいるんです。僕は、元々の歌詞を変えずに新しい意味を付けるのが得意でやってたんですが、元のニュアンスそのままで唄う事が一番だという人がいる。
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- へえ。
- 山本
- MCも違うんです。盛り上げるのと、紹介だけの人と。最初は許せなかったですね。盛り上げようとしないとか、やる意味があるのかって。でも、その後合宿したり練習したりしていく内に、この人の最高潮はこれなんだなって思えるようになったんです。皆フロントマンになりたいわけじゃないんやなって。それは逃げや自信の無さじゃなくて。
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- 今の山本さんは、彼のコピーについて認めている?
- 山本
- 認めてますね。それが彼の目標ですから。堂々としているのを見ていると嬉しいです。おっさんになった時も、変わらないでいてくれるかなあって。
イッパイアンテナ
同志社大学の学生劇団「同志社小劇場」のOBを中心として、2007年11月に旗揚げされた演劇団体。主な演目はコメディとコント。劇場を気持ちよく走り抜けるライブ空間にすべく日夜活動している。(公式サイトより)
質問 渡辺 綾子さんから 山本 大樹さんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、同じくイッパイアンテナの渡辺さんから質問を頂いてきております。「役者じゃなかったら何していましたか?」
- 山本
- そうですねー。役者をしたいという気持ちが根本的過ぎて、逆に気付かなかったんですよ。色々考えて、消去法的にやっと役者に辿り着いたんですが、その前は先生になりたかったんです。
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- あ、そうなんですね。何だか似合うと思います。
- 山本
- ありがとうございます、で、教職課程を取ったんですよ。でも授業には全然行かなかったんです。最低ラインで合格すればいいと思っていたんですが、その前に何故先生になりたいのか考えないとあかんと。整理して考えてその答えが出なかったら辞めようと思って一日考えたんです。最終的な答えは青春ドラマでの先生になりたかったんだと自覚して。文化祭でも生徒の自主性に任せるんじゃなくて、これやろうぜ、って言っちゃうんだろうなって。だから、その道は辞めました。
売り方を自分達で
- 山本
- で、まあ結局自分の事を知って、俺は役者になると言ってたらバイト先のつながりで肥後橋輝彦に会って。僕芝居やりたいんですけど、って言ったら盛り上がったんですよ。「THE掘削」に出演させてもらって、そこでクールキャッツさんと会って。
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- あ、共演されたんですね。
- 山本
- この人とやりたいなってなって、4月の公演の打ち上げにお邪魔させて頂いたんです、その日誕生日だったんですけど・・・
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- おおっ。
- 山本
- 「俺、イッパイアンテナに就職します」って言ったんですよ。
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- 何故、イッパイアンテナだったのでしょうか。
- 山本
- めっちゃ売れたいととりあえず思っていました。それには事務所に所属したりとかが普通だと思うんですが、売り方を自分達で決めていったほうが面白いんじゃないかって。
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- なるほど、そう考えるとすごく自由ですね。
壁の中に生きる人々
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- 山本さんは、役職に美術デザインとありますが。
- 山本
- 僕は最初、小道具だったんですよ。で小嶋が舞台セットで、その上に載っているものは何でも僕が選んで集めてきたものでした。動かへんもの全部。このカフェで言うと、テーブルからイスまで。さすがにそれは死ぬほど大変なので、動かへんもののデザインを決めるようになって。ここはこういうデザインで行きます、って。結構いいポジションなんですよ(笑う)。
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- あ、そうなんですね。
- 山本
- 今はチラシのデザインや文章の作成を任せてもらってます。ガツガツやっています。
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- そうそう、イッパイアンテナの美術は凄く可愛いですよね。
- 山本
- そのセットに住んでいるのは小粋な奴という設定なんですよ。イッパイアンテナの作品はパネルが置いてある事が多いんです。箱庭じゃないですけど、ちょい小粋な世界が見えるようになっています。
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- そういえば、室内である事が多いですね。それは何故でしょうか。
- 山本
- お客さんが位置している4つ目の透明な壁から見たシーン、という考え方をしています。そして、その中で生きている人間はちょっと過剰でもいいと思うんです。見守っていてくれているお客さんには、やっぱり僕らが考える面白い人達を見てもらいたいと思うんですよ。だから、壁=誰か一人の視点として、世界の住人がプリッと生きていて欲しいですね。
アンテナ式舞台セットの作り方・山本さん編

- 山本
- 舞台のイメージを考える時、「バカも休み休みYear!」 とかの酒瓶の並べ方やら、ファイルナビゲーターのマネージャー専用のゾーンとか、もう僕の中で勝手に決めちゃうんですよね。それをミーティングに掛けてみて、それが脚本に取り入れられたり、逆に稽古での役者の動き方に影響を与えて、面白いシーンになったりするんです。
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- 連携があるんですね。
- 山本
- 結局、モノを作る時にかしこまってないんですよね。決められたルールは一旦外して考えています。大きくてそれだけで見ていてキレイなセットも凄いし、作れたらいいですけど、普段の生活で僕らが部屋に作っていっているインテリアだってそういう成り立ちをしているんじゃないかなと。
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- 閉じられた世界の中に、色んな文脈が渦巻いていたり整理されたりしているんですよね。そうして、ルールやイメージが具体的な形を持ち始めるというか。
- 山本
- 稽古を重ねていくと、ある時、小道具と役者と脚本が一つになる瞬間があるんですよ。そういう時はよっしゃ、となりますね。全力で遊ぶ事に大して、めっちゃ集中力が高くなります。
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- イッパイアンテナの具象舞台は一見ごちゃごちゃしているのですが、どこかに一体感がありキャラクター性を感じます。それだけでも見応えがありますね。
イッパイアンテナ9th session「バカも休み休みYear!」
公演時期:2010/9/17〜20。会場:アートコンプレックス1928。
信じあえる人々

- 山本
- 何か、京都の人の話すテンポが好きなんですよね。
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- というのは。
- 山本
- 原始的な言葉で話が出来ると思うんですよ。俺がこのコーヒーが美味しいと思ったら、「このコーヒー美味しいね」って伝えるだけで済むんですよね。大阪だと「で?」と聞き返される所が、京都にいると「そうだね」って返してくれつと思うんですよ。
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- ああ、はんなりしていますからね。
- 山本
- ネタを求められるような会話は、いつでも面白さを求められているようで、息苦しい気がしていて。間を怖がらないで、何かちゃんと話せるペースが好きなんです。面白い口触りの会話なんかより、ずっと情報の交換が出来るような気がするんすよ。コーヒーを愛している気持ちだって、そのまま表現出来るのが嬉しいんです。原始的な言葉を使えるから。
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- 抽象的な、とは違いますね。
- 山本
- うーん、相手の人の気持ちに対して信じあえるんですよ、そういう事を考えている人とは。激しい言葉を使った時も、落ち着いて話が出来るんですよね。
コンパクト爪切

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- 今日はお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
- 山本
- ホンマですか。ありがとうございます。そんなそんな。
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- つまらない物ですが。
- 山本
- おっ。ツメ切り。おおっ。マジすか。
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- マジです。
- 山本
- 僕ね、爪を切らないんですよ。爪を指で千切るんですよ。それが何とか治りそう。