イッパイアンテナ12th session「討ち上げベイベー」

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- 今日はどうぞ、宜しくお願いします。小嶋さんは、最近は次回公演の稽古という感じでしょうか?
- 小嶋
- はい。京都と東京で上演する予定の「討ち上げベイベー!」という作品です。
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- 今回は何だか騒がしいタイトルですね。どのようなお話になるのでしょうか。
- 小嶋
- これは幕府が現代まで続いていたらという仮定で、AKO47士という、赤穂浪士をもじったアイドルグループがいる日本のお話です。
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- あ、つまり、西洋化されていない場合の日本ですか?
- 小嶋
- いえ、現代化はされていて、でも何となくの江戸文化が折衷している感じです。まだ、どうなるかは分からないんですけど。
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- そうそう、小嶋さんは役者と同時に舞台美術も手がけておられるんですよね。大変ですね。
- 小嶋
- そうですね、他の何人かと一緒に。同志社小劇場に入っていた大学一年からやっています。
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- なるほど。そういえば、イッパイアンテナは具象舞台が多いですね。
- 小嶋
- はい。舞台セットだけでどこまでリアルに近づけるかというのを意識しています。ただ、資料通りに作るのでは遊び心がないんですよね。美術デザインの山本と連携してやっていて、デザイン的にださくないものを意識しています。
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- あ、そうなんですね。いつも何か、妙にまとまったセットだなあと思っていて。
- 小嶋
- ありがとうございます。インテリア関係に興味のある人が多いので、その辺りのこだわりは負けたくないと思っています。
イッパイアンテナ
同志社大学の学生劇団「同志社小劇場」のOBを中心として、2007年11月に旗揚げされた演劇団体。主な演目はコメディとコント。劇場を気持ちよく走り抜けるライブ空間にすべく日夜活動している。(公式サイトより)
イッパイアンテナ12th session「討ち上げベイベー」
公演時期:2011/11/24〜27(京都)、2012/1/13〜15(東京)。会場:ART COMPLEX 1928(京都)、王子小劇場(東京)。
アンテナ式舞台セットの作り方・小嶋さん編

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- 今まで一番、思い入れのあるセットは。
- 小嶋
- 去年の年末にやった「無人島でコーヒー」 。いつもの具象舞台なんですけど、インテリアではなくて野外を劇場の中にそのまま作ったんですよ。会場はほとんど森のようになっていました。
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- 客席に入った時はびっくりしたでしょうね。
- 小嶋
- そうですね。出入口が見えないぐらいの暗がりがあって。そういう指定は全て大崎が指示して、それを僕らが近づけていく形です。まず設計をして、そこから打ち合わせ。大崎を始めとする稽古場のメンバーに伝わると、イメージが固まっていくんですよ。
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- おお。
- 小嶋
- すると大崎の方でも、「そういう設定の場所があるならこうしてみようか」って新しいアイデアが沸いてくるんです。まだセットは影も形もないですけど。
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- うーん。お話も部屋も、同時に作っていくんですね。
- 小嶋
- 実は大崎も、稽古場で台本を足したり変えたりする事が多いので(笑う)舞台セットの案が台本に影響する事があるんですよ。作ったり設営したりするのは人手不足だから大変なんですけど、そういう事があると面白いなと思いますね。
イッパイアンテナ10th session「無人島でコーヒー」
公演時期:2010/12/17〜20。会場:ART COMPLEX 1928。
アンテナは何も残さない・小嶋さん編
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- 小嶋さんにとって、イッパイアンテナとはどんな劇団なのでしょうか。
- 小嶋
- 僕はやる方も見る方も楽しいコメディが好きなんですけど・・・基本、見終わった後に何も残らないのが理想だと思っています。劇団としてもそういうコンセプトですね。そこはある種、短所としてメッセージ性が無いと言われるんですが、別に何かを訴えるつもりもないんです。ただ見に来てもらって「面白かった」と思ってもらえればと。次の日に何も覚えていない、でいいと思うんですよ。
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- なるほど。この10年、「終わった後に何も残らない」性については様々な劇団が理想としてきた境地だと思いますが、いかがでしょうか?
- 小嶋
- うちは、やっぱりハッピーエンドに近づける為にそういうコンセプトを掲げていますね。ネガティブな表現に対して、例えば人が死んだりとか、お客さんにそういう感情を覚えてもらってどうするんだ、という思いは個人的にはありますね。
質問 唐仁原 俊博さんから 小嶋 海平さんへ
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- 以前インタビューさせて頂きました、唐仁原さんから質問です。「柳川お疲れ様でした。好き勝手やる僕みたいな人と一緒に舞台に上がると大変な事も多いとは思いますが、今まで舞台上で一番焦った事はなんですか。人に言える範囲で結構です」との事です。
- 小嶋
- ありがとうございます。そうですね、これは本当にちょっとダメな話なんですが・・・。去年、Dogs on the tramp というカフェ公演があったんです。そこで僕が刀で斬られて虫の息でテーブルに突っ伏しているというシーンがあったんですけど。
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- ええ。
- 小嶋
- 僕はその公演中、役者の移動の管理の為に携帯電話を持っていたんですが、そのシーンの時だけ楽屋に置いてくるのを忘れてしまったんですよ。もちろんバイブモードにしてたんですけど、メールが来て、目を閉じたまま何でここに携帯があるんだって思っていました。
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- うわ。
- 小嶋
- そんなに動いちゃいけないシーンなので、バレないように携帯を切ろうとしたら、通話ボタンを押しちゃったんです。で、そのステージには仲のいい友だちが来ていて、ワンプッシュ機能でその友達に電話がいっちゃったんです。
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- 奇跡が重なりましたね。もしかして、その友達も電話を切っていなかった?
- 小嶋
- カフェ公演だったので、マナーモードのお願いはしていなかったんですよね。友達も電話をパッてみたら、「小嶋海平」って出ていて、でも僕は目の前で死んでるんで(笑う)。電話に出たら二重音声状態で舞台からも電話からもセリフが聞こえるみたいな。
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- それは・・・今、世界で一番かかってこないはずの人から電話が来てるわけですからね。
- 小嶋
- 舞台が終わった後に気づいて。あれは焦りましたね。
イッパイアンテナ8 1/2th session「Dogs on the tramp」
公演時期:2010/7/2〜4。会場:DEN-EN。
あのオチはどういう意味?
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- 前回の本公演、「ファイルナビゲーター」 。大変面白かったです。悪夢のようなオチでしたね。
- 小嶋
- はい。大崎としては、平和に終わるだけじゃなくてエグい事もやりたいという気持ちがあるらしいです。
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- そう、スラップスティックな感じですよね。あのドンデン返しは要らないですからね。正直言って。
- 小嶋
- 不思議なもので、ステージによっては大受けしたり、一切受けなかったり。アンケートにも「意味が分からなかった」とか「好きです」って書かれたりしたんですよ。いや〜、難しいですよね、ホモ落ちは。
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- 私の時は一切受けなかったですね。
- 小嶋
- 最後、野球部部室に来ていた生徒会長と書記がゲイ関係だったという事が映像で明かされるじゃないですか。
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- ああ、あの生々しい。
- 小嶋
- あの時のスクリーンを出したのは、その二人だったんですよ。僕と村松が出しました。
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- あ、そうなんですか!
- 小嶋
- 人手不足なんで。自分達の映像を自分達で出して、そして一切ウケない時があるんです(笑う)。本編のウケが良かった時は、何をやっているんだろうと思っていました。
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- でも、そういう普通はしないドンデン返しが出来るのがイッパイアンテナの強いところなんじゃないかなと思うんですよ。
イッパイアンテナ11th session「ファイルナビゲーター」
公演時期:2011/5/13〜16。会場:ART COMPLEX 1928。
「ファイルナビゲーター」の思い出

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- 今後、イッパイアンテナはどんな方向で行けば良いのでしょうか。
- 小嶋
- これまでは、今いるメンバーだけで出来る作品を追求していこうとしていたんですが、振り返ってみると反省点の多い内容だったんです。が、「ファイルナビゲーター」では一つの到達点が見えたんじゃないかなと思っています。
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- というのは。
- 小嶋
- それまでの作品では、シーンを繰り返し練習してもメンバーが演技を追求しきれていなかった事があったんです、が、ファイルナビゲーターの時は集中出来たんですよ。実は、メンバー同士で色々言い合ったんです。
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- 喧嘩したんですか。
- 小嶋
- いや、そこまでの事はしないですけど。「その芝居、つまらんわ」って冷静に。何でも言える環境にはなったのかなと思います。
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- 大事ですよね。言い合う事で、バラバラなメンバー同士でも信頼が出来ますもんね。
- 小嶋
- お互いに言い合ったから、じゃあ次は相手はやってくれるようになるし、だから自分もやらなきゃいけない。役者同士の掛け合いも、個人プレーも安定してきたと思います。ここは大丈夫、ここを乗り切れば大丈夫、というポイントが明確になっていったと思うんです。失敗した時も次のこの見せ場でみたいな、感覚が出来ました。
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- なるほど。
- 小嶋
- ウチは全員で紡いでいく方針なんですよ。何でも言えるようになったという事と、芝居の全体の流れを(言い方悪いですけど)コントロール出来たという感覚。これが大きな収穫だったと思います。今回の「討ち上げベイベー!」では客演さんもいて、初の東京公演ですし、これまでの成果が試される機会なのかなと思います。まずは、11月の京都公演でもっとイッパイアンテナの名前を知って頂ければと思っています。
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- 頑張って下さい。とても楽しみにしております。
試行錯誤だけじゃないやり方
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- 今後、小嶋さんはどんな感じで攻めていかれますか?
- 小嶋
- この間柳川さんで客演をさせてもらって、全く違うところのやり方を学べたので、とても勉強になりました。それを生かして、イッパイアンテナをベースに、どんどん外にも出ていければなと思っています。
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- ああ、「昔、柳川がいた」 ですね。どうでしたか。
- 小嶋
- 大変でしたね(笑う)。いつも参加している作品と全く違うので、戸惑う事はありました。会話の返し方も違うし、台本の解釈も違うし、ドツボに嵌りそうになって・・・でも、競演している二人の先輩が稽古場で色々な事を試しておられて、それが全て面白かったんです。短い稽古期間でしたが、スムーズに吸収出来たと思います。
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- 次に、同じような短い作品を作るとしたらどのような事に気をつけたいですか?
- 小嶋
- 競演した浦島さんが仰っていたんですが、「やり過ぎると良くない」んですよ。どうしても感じる事が出来なくなってしまう。演技の解釈やタイミングを繰り返し試行錯誤すると、中身に取り込まれて面白さを感じる事が出来なくなるんですね。
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- 面白さの論理は知り尽くすのに、外から見た時の味が分からなくなると。
柳川presents「昔、柳川がいた。」
公演時期:2011/10/29〜30。会場:アトリエ劇研。
ユアンソープ・檜

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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。どうぞ。
- 小嶋
- ありがとうございます。(開ける)ユアンソープ?
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- 自然素材の製品だそうですが、実際いいものらしいです。檜タイプです。
- 小嶋
- あ、良い匂いしますね。使います。ありがとうございました。