「おしゃべり」を思う
        
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 - 今日はどうぞ、宜しくお願い致します。最近、高田さんはどんな感じでしょうか。
 - 高田
 - 僕は最近、ある学校に行きはじめまして。それが今年で一番の変化でした。言語聴覚士という、医療系の資格を取る専門学校なんですけど。
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 - ええと、コミュニケーションに関する障害のリハビリをする資格でしょうか?
 - 高田
 - そうですね。いいんですか?こんな、お芝居と関係のない・・・
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 - いえ、もちろんです。ざっくりとで結構ですので、その学校に入られたキッカケを教えて頂けないでしょうか。
 - 高田
 - これまでずっと病院でバイトしていてですね。で長年続けていると責任が重くなってきて。これはお芝居続けていられへんなという感じになってきて。でも、お世話になっている理学療法士の先生方に、こういう資格があるから、いっそ取ってみたら?と薦めて頂きまして。
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 - その専門に、興味はあるのですね。
 - 高田
 - 勉強を進めていく内に、お芝居のワークショップと被るところがあると気付いていて。親近感を感じています。
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 - 会話が困難な状態の人の回復を手助けする技術。そういう分野の勉強をされているのですね。
 - 高田
 - 色んな病気とかでコミュニケーションに障害を持つと、普段「何となく伝わるやろう」ぐらいに考えていた意思疎通がほとんど出来なくなる訳ですからね。
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 - 人間が関わり合う上で共通した前提としてある手段。それが崩れてしまう。
 - 高田
 - 原因としては生まれつきの障害という場合もあるし、後天性の場合もあるし。先天性の場合、口がうまい事動かないとか、口に奇形があるとかがあって。口唇裂、口蓋裂とかあるんですけど。また後天的な場合は脳出血などで障害が残って、聞こえているのに理解出来なかったり、しゃべろうと思うのに喋れない、そんな場合なんかもありますね。
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 - 何故、そこに興味を持ったのでしょうか。
 - 高田
 - そうですね・・・いまやっていていいな、と思うのは人と喋れるという事、ですね。黙りこくっているというのが性格的に得意じゃなくて。おしゃべりが好きなんですよ、一見大人しそうだと言われるんですけど(笑う)。結局、楽しく喋れている時間を持てるというのが一番重要なんじゃないかなと感じますね。
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 - ダベるのは幸せですもんね。
 
京都ロマンポップ
「物語は幸せへの通り道」京都ロマンポップは、2005年京都を拠点として旗揚げしました。作品は、よりふじゆきによる脚本:本公演と、向坂達矢による脚本:さかあがりハリケーンの二本を支柱としています。現在は、向坂達矢による脚本:さかあがりハリケーンを主に発表しています。本公演の舞台設定は、古代ローマ、中世ドイツ、昭和初期日本、そして現代と多岐にわたっていますが、一貫して描かれているのは普遍的な人間の悲しさや苦悩であり、そこから私たちの「生」を見つめなおす作品です。哲学的な言葉を駆使しながらも、役者の熱や身体性を重視する、ストレートプレイ。「ロマンポップ」の名前の通り、エンターテイメント的な要素も取り入れながら物語を紡ぎます。さかあがりハリケーンは、短編作品集です。その作品群は「コント」ではなく「グランギニョール」ただ笑える作品ではなく、どこか屈折した退廃的な空気が作品に漂います。歌やダンス、身体表現を最大限に取り入れていますが、対峙するは「現代の演劇手法」です。(公式サイトより)
質問 西村 朋恵さんから 高田 会計さんへ
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 - 前回インタビューさせていただいた、こまち日和の西村朋恵さんから質問です。雰囲気のある方です。ちなみに西村さんは旅行が好きで、海外に行かれた時に片言の外国語が通じた時がとても嬉しいんだそうです。新しい出会いっていいですよね。「女性の髪型で好きなのはどんなのですか?」
 - 高田
 - 女性の好きな髪型。どうでしょうね。ロングが好きですね。あとは、ヘルメットみたいな髪型の女の子が最近可愛いと思うんですけどね。
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 - 最近、まさにそういう子の写真を撮りましたよ。写真を見たら、「あコイツや」と言うと思います。(乾さんの写真を見せる)
 - 高田
 - ああ、こういう人です。このサブカルってる感じ。コイツやなあ。この人はどういう人なんですか?
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 - がっかりアバターの乾さんですね。
 - 高田
 - こういう感じの人が最近、ウザい所もあるけどいい奴やなあ、と思ってしまうんですよね。
 
舞台美術のためのワークショップ公演
        
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 - さて、舞台美術ワークショップ公演、京都ロマンポップ「夏の扉」。面白かったです。いかがでしたか。
 - 高田
 - 今回、実は本番期間が学校のテスト期間と危うく重なっていて。直前でようやく参加出来る事になったんです。WS自体はとてもやって良かったです。でも、もっと舞台を生かしきる、そんなやり方がもっと出来たんじゃないかなとは思います。一緒に出て頂いたゲスト劇団さんはもちろん素晴らしかったんですけど。ウチの作品的には、鍾乳洞というセットはしっくり来ていたとは思いますが。
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 - 作品に関してはもちろんです。玉一さん演じる、異常を来したお母さんの精神と、お兄さんにしか分からない地獄を端的に現していたと思います。
 - 高田
 - 鍾乳洞という、物質が煮詰まる空間と、家族の関係が煮詰まっている部分がうまい事しっくり行ったんじゃないかなと思います。舞台の良さも、作品の良さも、さらに引き出す事が出来たらさらに凄いと思いますね。
 
第1回 舞台美術のためのワークショップ公演
公演時期:2014/8/15〜17。会場:東山区総合庁舎2階 東山区青少年活動センター。
何でもいい、のかもしれない
        
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 - 高田さんが、かなり前にアートコンプレックス1928でされた演技が頭にこびりついて離れないんですよ。ふんどし一丁で白塗りで、女性の上に乗って腰を振って最後は顔射する演技。あれは素晴らしかったです。
 - 高田
 - 確かに、人前で裸に近い格好になるのはなかなかいいものでしたね。ああ、僕は何でもいいんだ、何もないんだ。情けなくも清々しいと思ったんです。
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 - というと。
 - 高田
 - 似非悟りなんですけど、何でもいいんだなあって・・・今まで自分は格好付けてたんだなあ、って思いますね。そのとき、ふわっと心が軽くなったと思います。最初はちょっと恥ずかしいなと思ってた部分はあるんですね、まんぐり返しのポーズになって、肛門の間際まで見せてしまうとすがすがしい気持ちにはなりましたね。お客さんも何故わざわざお金を払ってそんな汚いものを見なければならないのか、後で申し訳なく思いましたね。でもアンケートでは何故か評判は良くって。お芝居の空間はやっぱりちょっと違うんですかね。
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 - 承認されたという事ですね。
 - 高田
 - 一言で言うとそうですね。承認欲求がありますね、僕は。たぶん。
 
向こう岸の影たちへ
        
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 - 非常に奇妙な空気感を持つ高田さん。俳優として、高田さんの事を色々伺おうとしても、ちょっと難しいなと思っているんです。この人の何が独特かなんて見て頂いた方が早いんだろうし・・・
 - 高田
 - いやあ、作り方が雑だからそんな言われ方に繋がっているのかもしれないと思っていて。不器用に不器用を重ねているから、そんな評価になってしまうのかなと。
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 - いえ!?
 - 高田
 - 違いますか?違ったらそれは嬉しいですけど。
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 - いえいえ、上手ですって。独特な雰囲気なのに、「あ、これはこんな人だ」とすぐ理解しやすいって凄い事だと思います。「どくの沼地」で演じられた、泥団子を作る道しか無かった職人の姿が素晴らしかったです。
 - 高田
 - 真面目な話していいですか。
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 - もちろんです。
 - 高田
 - 上手な演技をして上手く伝えたいみたいな欲求が全くないんです。
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 - ほう。
 - 高田
 - 上手な人を見ているとめっちゃ凄くて、僕はこれは一生出来ないだろうなと思うんですよね。でも、自分がこれをしたいかと思うとそうでもないんですよ。
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 - 上手な演技に憧れない?
 - 高田
 - ある一定以上の上手な人の、押し付けがましさとか全然出してこない演技で、それをやったら絶対感動するような芝居をみてさえ「何という押し付けがましさや」と思って見てしまうんです。自分の性格が悪いからなのか、ムカつくなあ・・・と思うんですよ。ナチュラルなテクニックの、上手に見えてしまう人って、何か押し付けがましいと思ってしまうんです。凄く、色んなものを疑ってしまうんで。乗せられたくない、みたいな。上手な人に対して。悪い風に言うと、自分が相手を乗せたくないみたいなところもあるのかなあ、と。心のどこかで思ってしまうんですね。悲しいですね。
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 - それは、支配されたくない、という思いがあるんじゃないでしょうか。
 - 高田
 - 一言で言うと。
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 - ええ。観客席の中にいてさえそう思うのでしょうか。
 - 高田
 - 思いっきり同意しますね。僕はあまり芝居を見に行かないんですけど、めっちゃ笑っていても受け入れていないんですよ。どこかで僻んでいたり。
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 - まあ私も差別心ありますけどね。
 - 高田
 - 駄目でしょう(笑う)。
 
揺らぎと演技
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 - 今後、高田さんはどんな感じで攻めていかれますか。
 - 高田
 - とりあえず、あまりカチッとした演技はしていきたくないなと思っています。こんな事を言うと向坂に叱られるかもしれないですけど。格好いい言葉で言うと、揺らぎみたいなものを持ち続けたいなと思っています。
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 - 素晴らしい。
 
革製のブックカバー
        
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 - 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
 - 高田
 - ありがとうございます。開けます。おっ。
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 - それ、包装が凝ってるんですよ。
 - 高田
 - これは、ブックカバーですね。嬉しい。最近、変な本を買ったんですよ。
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 - というと。
 - 高田
 - 魔術についての本なんですけど、魔法がある前提で書いてあるんですよ。だから逆に魔法を全然解説出来ていない。変な本なんです。