結構大きな変化

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- 今日は、今年4月に突劇金魚に入団された山田まさゆきさんにお話を伺います。どうぞ、よろしくお願い致します。山田さんは、最近はいかがでしょうか。
- 山田
- 最近。4月から劇団に入ったので、新鮮な感じがありつつ過ごしていますね。
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- 劇団に入るのは初めてですか?
- 山田
- 初めてです。
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- どんな気分がしますか?
- 山田
- 思ってたよりもそんなに何も変わらないですね。もっと拘束されるのかと思ってたので。でも、作品を作る上で、客演という立場では流していたところを、結構突っ込んで話が出来るようになりましたね。それは大きな変化です。話し合って作品の作り方から大幅に変わってきているので、今はそれが次回作品にどう影響するのか楽しみです。
突劇金魚
関西学院大学の演劇グループSomethingの99年度生(OG)、サリngROCKを中心に結成。2008年12月に蔵本真見が入団。2012年4月に个寺ギンと山田まさゆきが入団。現在6名で活動中。独特な関西弁のセリフまわしで、他にはない世界をつくる。不器用な登場人物たちのチョット毒あるお話を、派手目の極彩色でイロドる世界観。音で刺激。見た目で刺激。プププと笑って、チクッと刺される新感覚。2008年「愛情マニア」で第15回OMS戯曲賞大賞。2009年「金色カノジョに桃の虫」で第9回AAF戯曲賞優秀賞。2010年夏には渡辺えりユニットえりすぐりに関西女流作家の1人として脚本を提供している。(公式サイトより)
ミジンコターボ「シニガミと蝋燭」
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- ミジンコターボ「死神と蝋燭」。お疲れさまでした。結構メタ的な立ち位置でしたね。
- 山田
- そうですね。僕の演技スペースは舞台の二階だったんですが、そこから小説家の描く世界を見守るみたいな。メインのスペースで演じてるみんなを誰よりも見るみたいな。
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- ご自身としてはどんな経験でしたか。
- 山田
- 何か子供もたくさんいたりして、文化祭を思い出しました。本番中も、袖から片岡百萬両さんと舞台上の役者の気になるところや、舞台袖で起こる事件を見たりして楽しんでました。「あいつ出とちってる!!ちょっと悩んで・・出るのあきらめたー!!」とか。ミジンコターボさんは二人の作演出家さんがいるんです。片岡百萬両さんの作品はコントっぽくてあったかい感じで、竜崎だいちさんの作品は最近はちょっとダークなファンタジーです。今回は竜崎さんでしたね。世界観と、リズムで見せる芝居でした。楽しかったです。
ミジンコターボ
大阪芸術大学文芸学科卒業の竜崎だいちの書き下ろしたオリジナル戯曲作を、関西で数多くの外部出演をこなす片岡百萬両が演出するというスタイルで、現在も関西を中心に精力的に活動中。2011年からは東京公演も行う。現在劇団員は片岡百萬両・竜崎だいち・Sun!!・川端優紀・江本祥・赤松洋樹・中元優那・西野遥子・箕原汐梨の合計9名で構成されています。最終目標は月面公演。(公式サイトより)
ミジンコターボ-10『シニガミと蝋燭』
公演時期:2012/7/27〜29。会場:ABCホール。
客演では踏み込めないところ

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- 突劇金魚の7月の短編公演、キンギョの人々vol.2「蛇口からアイスクリーム」 面白かったです。その内の一つ、「夏の残骸」に出演されていましたね。この作品、10月に伊丹AI・HALLで長編として上演される のですが、それも楽しみです。山田さんは謎の男役でしたね。
- 山田
- ありがとうございます。僕の役も、掘り下げたりすると思います。
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- あの部屋の中に割ってはいる役どころでした。では、意気込みを教えて頂けますでしょうか。
- 山田
- そうですね。劇団員になって稽古の仕方とかも色々話し合えるようになったので、今は新しい方法を試して、変更してを繰り返してます。今まで以上に濃厚な仕上がりになると思います。
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- 演技の作り方について、最近気になる事があります。表現の程度についてです。昨日、金曜ロードショーで「ソルト」って映画を見たんですけど、そこですごく難しい演技があったんですよ。
- 山田
- ええ。アンジェリーナ・ジョリーの。
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- はい。ロシアの女スパイが潜入先で作った旦那を誘拐されて、それで昔の仲間のアジトに入って、直後に旦那を殺されるんですけど。そこで顔色を変えずに仲間の信用を経る。そうして生まれた油断をついて全員を殺害してアジトを去るんですね。そこで、シーンの最後に旦那の死体を見るんですよ、死体に駆け寄る訳でもなく、昔をちょっと思い出して、でも泣く訳でもない。「やや顔をしかめる」。それだけなんですね。
- 山田
- はい。
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- そこが最大の見せ場だと思うんですが、表現をその程度に留めたのは誰なのか。
- 山田
- まず、誰が演技プランを考えるのかといわれると、俳優が自分のやりたいことを提示して、それが演出家の想像を越えれば採用になると思うんですが、そうでなければ演出家のプランに流れていくんだと思います。僕の場合は、演出家によって好みもやり方も違うので、やりたいことをやりながら、演出家がどういうアプローチが好みなのか探ります。でもまあ、たいしてできる事もないので、一生懸命やるしかないです。
キンギョの人々vol.2「蛇口からアイスクリーム」
公演時期:2012/7/2〜4。会場:in→dependent theatre 1st。
突劇金魚 第13回公演「夏の残骸」
公演時期:2012/10/12〜15。会場:AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)。
質問 飯坂 美鶴妃さんから 山田 まさゆきさんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、飯坂さんから質問を頂いてきております。「舞台上に立って演技をしているとき、何を考えていますか?」
- 山田
- 基本的には、ぼーっとしているようにしています。
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- えっ!? どういう事ですか?
- 山田
- 僕の場合はぼーっとしている方が気付く事が多いんですよ。例えば共演者の衣装とかも、寿司職人の役なのにそんな革靴履いてるんやーとか。自分の反応が良くなるんです。
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- 反応が良くなる。
- 山田
- ツッコミどころが見つかったりして、楽しいんですよ。力を抜いて、台本も頭の中で追っかけないし、相手が台詞を飛ばしても気づかないでシーンが終わってるときもありますね。ダメですけど。もちろん、シーンによって違ったりもしますけど。
昔の題材、今の視点
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- お芝居を始めたのはどのようなきっかけがあるのでしょうか。
- 山田
- お芝居をどうやってはじめたらいいのかわからなくて、とりあえず生瀬勝久さんが好きだったので、そとばこまちの公演をAI・HALLにまで見に行ったんです。それが初めて見た小劇場で、その舞台には生瀬さんは退団されていていなかったんですが、ワークショップのチラシが挟み込まれていて、それに参加したのが最初です。そこで、色んな人と知り合ったり、公演を見に行ったり。
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- そして現在、突劇金魚に。入団されたのにはどのような理由がありますか?
- 山田
- 劇団って、どうなってるんやろうという興味が最近出てきまして。公演制作の仕組みとか。あと、稽古場が近いのが大きいですね。サリngさんのお祖母さんの家だったそうですが。
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- あ、その理由が大きいんですね(笑う)。
- 山田
- もちろん、サリngさんの作品が好きだというのはありますけどね。以前は個人的な話が多かったのが、最近は普遍的な題材になってきたなあと思います。
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- 個人的な題材。そういえば、「巨大シアワセ獣のホネ」にしても「ビリビリHAPPY」にしても、最後に主人公が旅立っていくラストだったと思うのですが、それが個人としての自立というテーマにまとまっていっているような印象はあります。
- 山田
- そうですね。「巨大」の時、ずっと川で生活している女の子が、川の向こうに見えるビルの赤いライトが怪獣に見えて、引き付けられるように行ってみたら特に何も無かった、その繰り返しみたいな。
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- 「夏の残骸」では個人に迫っていくというよりは、部屋割が明確なアパートメントを舞台にして、そこで割り切れない生命を描くという感覚がありますね。これから、どんな風景が見えるのか楽しみです。
突劇金魚「巨大シアワセ獣のホネ」
公演時期:2011/2/2〜7。会場:精華小劇場。
突劇金魚「ビリビリHAPPY」
公演時期:2009/11/25〜29(大阪)、2010/2/23〜24(東京)。会場:シアトリカル應典院(大阪)、こまばアゴラ劇場(東京)。
掻き立てられる

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- お芝居をやる上で、目標はありましたか。
- 山田
- 昔は、色んな劇団に呼ばれて、自分が客席から見ていた、面白い人たちと一緒に芝居したいと思っていました。今は、自分が頭でイメージした事をちゃん表現出来るようになりたいです。例えば、こういう音で台詞を言いたいんだけど、イメージした音が出なくて悔しい思いをする事があるので。
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 山田
- 個人的には脚本を書いたりしてみたいですね。実は去年、イベントで一人芝居の短編を書いて上演した事があります。劇団員としては、メンバーとしてよりよい作品を作っていきたいと思います。
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- サリngROCKの作品について、以前ある人と話していたんですが、未完成ではなく不完成な作品だと言えると。それはそうかもなと思うところがあって、それが非常に魅力なんですよね。
- 山田
- ええ。
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- そのような作品を一緒に作っていくのであれば、所与の要素を意識的に表現しないという離れ業をしないといけないと考えています。しかもそれは、直接的には面白味には繋がらないにも関わらず。だからこそ、いつもは置き去りにするようなところをスルー出来ない部分ばかりになる。
- 山田
- そうですね。さっきの映画の話でもあるんですよね。どこで足してどこで引いてという。さっきの「ソルト」で思い出したんですが「悪人」という映画でも、榎本明が娘の死体を確認する時に、全く表情を変えないというシーンがありましたね。そういうのいいですねぇ。
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- 何でそんな演技が成立するんだろう。
- 山田
- やっぱり、見ている人の想像力が掻き立てられるんでしょうね。役の人物の心情が、悲しいとかショックとかお客さんは分かっているので。そこで表情が変わらないのを見ると、共感が裏切られて、なんで?、って思うのかもしれません。泣かれたら、まあそうやろうなと終わるところを。
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- きっと、突劇金魚の公演では、それが複雑に折り重なったものが見えるのかもしれない。
- 山田
- 分からないまま終わるかもしれませんけどね(笑う)。
前田知洋魔法の扉mini

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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- 山田
- あ、ありがとうございます。
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- どうぞ。
- 山田
- え、すごいですねこれ。マジックですか?
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- ちょっと小さいトランプですが、普通に使えるものです。マジックのガイダンス本がついています。
- 山田
- 帰ってやってみます。