イメージが重要

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- 今日はどうぞよろしくお願いいたします。石田さんは最近、どんな感じでしょうか。
- 石田
- 普通に過ごしています。毎日、大学の友達と長電話をしたり。代わり映えのない。
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- どのぐらい話すんですか?というか、毎日話すんですか?
- 石田
- 多い時であれば一日1時間ぐらいです。どうしてこんなに長く話せるんだろうと思うぐらい、話しています。本当に腐れ縁と言うか。
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- 電話以外ではどんな感じですか?
- 石田
- 普通に物理の勉強をしたり、教習所に通ったり、稽古に行ったりしています。
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- 理系なんですね。
- 石田
- ど理系です。実は理系一族で、僕だけ唯一演劇しています。
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- 専門は?
- 石田
- 物性関係で、色々なものに電気を流してその反応を調べたりしています。最近は論文を読んだりしています。全然わからないんですけど、無理矢理読んで把握しようとしています。
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- 何か掴めるといいですね。
- 石田
- そうですね、分からないことが多いですからね。ていうのと、教科書に載っていることが果たして正しいかどうか。目に見えないレベルの分子とか原子とかの世界をイメージで補完するので。アインシュタインも頭の中で全部実験してデータを取ろうとしていたし。物理の人って、意外とイメージが重要だったりするんです。
第24次 笑の内閣「日・韓・米・春のツレウヨまつり」

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- ツレウヨのアメリカ編ですね。どんな作品になりそうでしょうか。
- 石田
- 他の日本編、韓国編と比べて、自由にハチャメチャする人が多いと思います。正直、今の段階でどうなるかというのがはっきりとは分からないですね。でも稽古場の雰囲気が良いので、これはいい作品になるやろうなと、なんとなくの実感があります。
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- 稽古場の雰囲気がいいんですね。石田さんはどんな感じの役なんでしょうか。
- 石田
- 自分の役については色々考えてるところがあります。人それぞれ価値観があると思うんですけど、私の役はトランプ大統領が好き、という価値観を強く持っている人で。それが周りの人に対して迷惑をかけてしまう。本人は純粋な気持ちなんですけど。
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- ええ。
- 石田
- 強いこだわりや価値観は本人に窮屈な思いをさせたり、周りに迷惑をかける可能性がある。普通のお客さんの中でも、そういう風に自分の譲れない価値観を持っていて、知らずに窮屈な思いをしている人もいるやろうな、と思っています。そういうお客さんにコミットできたらいいなと思っています。
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- 自分の思いに押しつぶされて、振り回されてしまってる人。そういう人と、思いを共有するということですね。
- 石田
- 演劇をやって行く上でも、アドリブが嫌いな人もいたら、アドリブから何かを生み出す人がいたりしますよね(表面的にぶつかったりはしないんですけど)。そういう部分を、私の役を通して考えて行くことができたらいいなと思っています。
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- 石田さんご自身には、例えばそういう思いやこだわりはありますか?
- 石田
- 普通に、人を傷つけたくない。ということを守って関係を結んだりしていますが、その基準は人それぞれなんですよね。僕の範疇を超えられて、まあ、困ったりとか・・・。でも、そういうのはみんなありますけどね。誰かにそういう事をしてしまったり、されたり。そんな事があります。
第24次 笑の内閣「日・韓・米・春のツレウヨまつり」
「国よりも、私を愛して」
京都市に住む女子大生、日向あおいは最近同棲中のツレ、富山蒼甫の様子がおかしいことに気をかけていた。気になりパソコンを覗いてみると、そこには韓国への罵詈雑言が。心配するあおいをよそに、蒼甫はK-POPアイドルばかりよぶ近所のスーパー・フジマーケットにデモにでかける。
どうしちゃったのツレ?なにがあったのツレ?
笑の内閣の代表作である、愛国心を問う思想系ラブストーリーは海を渡り、初の海外進出公演としてソウル公演を開催!
京都凱旋公演では、日本の嫌韓ネトウヨをこきおろす「日本編」の他に、韓国を舞台に彼氏が反日になってしまう「韓国編」、彼氏がトランプ支持 になってしまう「アメリカ編」も同時上演。
世界中の自国が好きすぎるナショナリストをぶった斬る。
■日程・会場
<京都公演>(3編上演)
・日程
2017年
5月17日(水)19:00 日本
5月18日(木)19:00 韓国
5月19日(金)19:00 アメリカ
5月20日(土)13:00 韓国/18:00 日本 ★
5月21日(日)11:00 アメリカ/15:00 日本/19:00 韓国
5月22日(月) 休演日
5月23日(火)19:00 日本
5月24日(水)14:00 韓国/19:00 アメリカ
5月25日(木)14:00 アメリカ/19:00 日本
5月26日(金)19:00 韓国
5月27日(土)13:00 アメリカ ★/18:00 日本 ★
5月28日(日)11:00 日本/15:00 韓国/19:00 アメリカ
5月29日(月)14:00 日本
※受付・開場は開演の30分前
終演後、番外公演『君の名は。』(上演時間20分)を上演。
出演:青山和樹 騎馬穂乃佳 高間響 丹波橋☆あーりん 土肥嬌也 中本友菜
■会場
アトリエ劇研
何かをしている自分

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- 石田さんがお芝居を始めた経緯を教えてください。
- 石田
- 小学校の頃から、父の影響で剣道をしていました。中学3年生まで続けました。高校でも剣道を続けようかと思って、剣道部の部室に見学したんです。そしたら、先生に「君には無理だよ、やめとき」と言われたんです。たぶん、その先生は僕を試していたと思うんですけど、「ああ、やめよう」と素直に思って。高校は三年間ずっと帰宅部でした。
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- なるほど。
- 石田
- でも、何かをしたいなーという気持ちはあって。その時の、友達の女の子が中学から演劇部だったんです。その人から演劇部の話を聞いていて、そこから興味を持ったんですね。「何もしていない自分」が楽でもあり、反面、嫌でもあったんですね。
刺激、価値観

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- 最近石田さんが考えていること教えてください。
- 石田
- さっき話した腐れ縁の友達の事なんですけど、「俺は何でこの人とこんなに話せるんだろう」と自分でも疑問に思うんです。結論としては、その人が僕と全く違う価値観を持っているから飽きないんですね。もちろん、皆さん全然違う価値観を持ってますけど、だから話していて楽しいんです。
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- 違う価値観。
- 石田
- たまに思うんですけど、お金ももらえないのに演劇をやっているのはなんでだろう、と。お客さんを幸せにしたいとか、そういう思いで演劇をやってる人もいるかもしれないですけど、それはお客さんの自由であってほしい気がしてて。それは何が楽しいんだろうなと。
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- 確かに。
- 石田
- 演劇って、腐れ縁的なところがあるんじゃないかなと思うんです。全然違う価値観を持っている人達の腐れ縁。それが、ずっとやっていても楽しい秘密なんじゃないかなと思うんです。お互いを知り合う、みたいな関係性があって。自分の価値観を増やして、もっといい演技ができるようになるような。
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- 例えばどんな刺激ですか?
- 石田
- 実は僕、以前右目に怪我をして、しばらく入院したんですよ。今でも見え方が少し違うんです。そうなる前と後ではちょっと考え方が変わったなと思って。それまでは「自分の役をどうすればいいのか」という事ばっかり考えてたんですけど。退院後は、自分の役とお客さんの関係性とか、演劇というものとどういう関わり方をするべきなのか、とかそういうことを考えるようになりました。
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- ところで、今は右目はどうなっているんですか?
- 石田
- お医者さんに言われたんですけど、「右目を使わなかったら斜視になる」と。右目自体が見えてはいても、頭の中で邪魔な情報としてカットされてしまう。そこの部分だけ電源を抜かれているような感じ。実際、いまも輪郭はしっかりしてるんですけど、意識して見ているとぼやけてくるんです。そんなことが自分にも起こってるんだろうな、と。そういうことから考えて、僕は舞台上でお客さんをひとくくりにして見ているけれども、もしかしたらそのお客さんの中で、外れている人がいるんじゃないだろうか、と思うんです。
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- いわば、視界からはぐれている人がいる?
- 石田
- 意図してはいないけれども、結果的に一部のお客さんにだけ、芝居を向けている。そんな恐れもあるんじゃないだろうか。
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- 観客の中にも、異質な意識を持っているお客さんがいる。
- 石田
- 異質と言うと失礼かもしれませんけど。全てのお客さんのことを考えるわけにはいかないですけど、お客さんに見せるんだったら、一応、どういう風なお客さんがいるかというのを考えた上でやりたいなと思っています。それがどういう芝居なのかは分からないんですけど。でも、ピンク地底人3号さんが昔おっしゃってたんですけど、「劇場を出た後に世界の見え方が違う芝居」。すごくいい言葉だなぁと思ってます。そこまでではなくとも、見てくださったお客さんに何かしらの気持ちを与えられたらなあと思ってます。
困っている人
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- いつか、こんな演技ができるようになりたいとかはありますか
- 石田
- 私、濱田岳さんが好きで。「アヒルと鴨のコインロッカー」とか、AUの三太郎のCMとか。カッコいいと言われる人じゃないんですけど、困っている人間が必死に頑張っている姿。ああいうのに共感があるんです。そういう共感を与えられたらいいなと思っています。
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- そういう男性像。
- 石田
- 私自身が困っている人間なので(笑う)、そういう役をうまくできたらいいなと思ってます。
質問 重実 紗香さんから 石田 達拡さんへ
視力

- 石田
- これはただの雑談ですけど、僕も角膜移植してみようかなぁって。
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- ああ、献体待ち?
- 石田
- でも、もっと重症な人に先に行くので。もしくはIPS細胞の技術が確立されたらいいなと。角膜が削れているので、レーシック手術とかは出来ないんですよ。
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- 辛いですね。
- 石田
- 今の見え方も結構好きですよ。でも、まあ手術が終わって視力が戻ったら、それもまた面白い体験になるかなと思ってます。
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- 私も大学3年生になるまでメガネをかけなかったんですよ。視力0.1とかで、それまでぼんやりとした世界で生きていました。メガネをかけたら、街路樹の葉っぱ一枚一枚がはっきりと見えるんですよね。
- 石田
- 私も昔は眼鏡をかけて無くって。メガネをかけて山を見ると緑の詳細が見えるんですよね。見えるって大事だなあと思います。
飛び火

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- 劇団しようよの、「CEREMONY」の思い出を教えてください。
- 石田
- 稽古が面白かったです。ただ、取り扱ってるテーマが重大だったので、どういうところに飛び火をするのかわからない、というのが怖かったです。お客さんの中にどういう人がいるのかわからないですけど。
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- というのは。
- 石田
- 僕の祖母がアルツハイマーが進行していて、完全に記憶がなくなって衰えてしまっていて。いつ亡くなるかわからないと状態なんです。そういう境遇に置かれている人やその身内の方に、ラストのシーンを観させたら深い恐怖感を与えてしまうのではないか。ゆざわさなさんの、服を着ようとして着れない、という振付が、飛び火のように共感させてしまうかもしれないなと。幸いにして、そういうお客さんはいなかったと聞いてはいますが。考えすぎだとみんなには言われますが。
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- 芸術はそのためにある、ともいるかもしれませんが。
- 石田
- もちろんそれで良い価値観をお客さんに与えられたらいいんですけど、嫌な思いをしてしまったりとか、とてつもないトラウマになってしまったりすると、ちょっと恐いなぁ、と思っていました。そういう責任を持ってやっているつもりですが、責任が負えないぐらいの影響を与えてしまったらどうしようか。あの作品は非常に好きです。でも、お客さんにどう捉えられるか、については敏感でした。
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- 終えてみていかがですか。
- 石田
- 考えすぎだったかな、そして、「考えすぎ」に終わって良かったと思う部分もあります。それから、自分にとっても身近な、死についての考えが深まった気がします。僕は「ハリネズミの寿命は3〜5年」という意味合いのパネルを持っていました。実はふむふむ君もちょうど3年なんです。なので、ハリネズミにとって幸せな生活ってなんだろう、という事を稽古期間中に思っていました。
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- ええ。
- 石田
- ハリネズミって単独で生活するものだからあんまり触ったりするとストレスになるんですよね。夜行性なのであまり外に連れて行くこともできない。なでたりはするんですけど、やりすぎてはいけない。果たして、そんな生活が幸せなのだろうか。狭いケージの中で一生を終えるのが。正直すごく難しいテーマです。なんか、ふむふむ君が来たことによって、親としての感覚が分かるようになってきて。ふむふむくんと私の性格が似ているんですよ。シャイなところとか。だから尚更、この子をどうしてあげればいいんだろう、って。
これから

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- 今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
- 石田
- あまり演劇に依存せず、腐れ縁程度の関係性が良いのかなと思ってます。これがないと生きていけないという感じになってしまうと、それはそれで自分を狭めてしまうんじゃないかと思うんです。演劇人に見せるんじゃなくて、普通の人に見せたいです。なんか独特ですよね演劇って。
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- ええ。
- 石田
- 僕が働いているバーのマスターに聞いたんですけど、「バーの空間というのは、会社で働いている社会人と、家庭の父親や母親の役割がある家庭人、そのどちらでもない間にある空間。そこで何でもない人になって、そして家に帰る」。演劇でも似たようなことが言えるんじゃないかなと思うんです。日常生活でもないし、友達といるところでもない、また全然違う空間。その空間で演出家とか出演者の持っている全然知らない価値観がお客さんとコミットしてきて、劇場を出た時に世界が違って見えるような。
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- 世界が違って見える。
- 石田
- 異質な空間であるために、普通の人達の感覚をよく知っておく必要があると思うんですよね。
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- そうですね。そういう場所としての劇場。
- 石田
- 映画館や遊園地はそういう空間だと思うんですけど、劇場はまた違うと思います。異質な空間ですけど、あくまで人が主体になっている空間。