ファックジャパン独り舞台『愛はないと ぼくは思う』
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。
- FJ
- よろしくお願いします。
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- 最近、ファックさんはどんな感じでしょうか。
- FJ
- 僕ですか、僕は夢も希望もない感じですね。
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- 夢と希望はファックさんの人生には必要でしょうか。
- FJ
- 必要ですね!欲しい。欲しいです。
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- 夢も希望もある人生があったかもしれない?
- FJ
- 酷な事を聞きますね。
劇団衛星
「小劇場での演劇でしか絶対に表現できない舞台表現」を極めるべく、1995年6月設立。「演劇人=アルバイト生活」の常識を破った、フリンジ業界における非常に珍しい専業演劇人集団である。京都を拠点に、既存のホールのみならず、寺社仏閣・教会・廃工場等「劇場ではない場所」で公演を数多く行い、茶道劇「珠光の庵」や裁判劇「大陪審」などの代表作を全国で上演。また、演劇のポテンシャルを利用したワークショップなど「演劇のないところに演劇を送り込む」活動を、幅広く展開中。(公式サイトより)
ファックジャパン独り舞台『愛はないと ぼくは思う』
公演時期:2014/4/4〜6。会場:KAIKA。
静けさ
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- 「愛はないと僕は思う」。次回公演のタイトルですが。4月4日からですね。とても楽しみです。
- FJ
- ありがとうございます。
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- 私はこの作品の前進となる「お母さんとファック」という作品をgate#9で拝見しました。会場は、同じKAIKAですね。あの作品は、一人語りそのものを高度に洗練したらどうなるかという文学的な実証であったかもしれないと考えています。
- FJ
- 洗練。
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- 語る時のファックさんの身体がとても純粋だったと思うんです。ご自身の半生を素直に語っているからなのかもしれませんが、同時に虚構でもあるという前提が役者と観客の間に明らかに対流を生んでいるんです。それは一人芝居という形式の性質ではありますが、ファックジャパンという嘘モノなのか真実なのか分からない存在の語る、夢と性欲と静けさが一緒くたになった世界がとても美しかったんですよ。
- FJ
- なんかその、「お母さんとファック」は、分をわきまえたいというか。そんなに効果的に、お話に乗りたくないというか。
- __
- ええ。
- FJ
- 自分は一体、何をしている時が一番興奮しているか、それは雑談している時なんですよ。思い出話を公の場でするための演劇だったと思います。面白い面白くないは優先順位は下げて。20分の思い出話をしてみた、という。
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- それにしてはとても幻想的でした。一つ、印象に残った手法があって。京都でのデートのシーンで、一人称がファックさんなのかお母さんなのかお母さんの相手の男性だったのか、ないまぜになっているシーンがありましたね。
- FJ
- 実際にその、母がデートした場所に行ったんですよ。それを思い出した順に書いていっていたら、そうなったというのはあります。
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- ファックさんの記憶や主体がスライドしていって、観客の思惟も同時にスライドしていって。集中して聞いていればいるほど、垣間見える景色が清冽に視界に飛び込んでくる。ただ単に美しいと思ったんです。
筆を握る
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- さて、脚本がごまのはえさんですね。
- FJ
- ありがたい事です。
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- 「愛はないと僕は思う」。とてもいいタイトルですね。
- FJ
- 最初は「思い出とファック」にしようと思ってたんです。照れ隠しの意味が、そこにはあったかもしれません。後日、ごまさんとサリngさんと打ち合わせを兼ねた飲みの席でタイトルの相談をしていたら、「そういうのじゃ無い方がいいんじゃないか」と。色々考えたんですけどいいのが思い付かなくて。
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- なるほど。
- FJ
- 去年のKAIKAでやった、gateの感想を語るイベントがあったんですよ。「ほぼ二畳大学」 。丸山交通公園さんの友達図鑑の感想を紙に書くのがあって、その中の感想に「愛があった」というのがあって、僕はそうは思えなかったので「愛はないとぼくは思う」と感想を書いたら、その文字面のウケが良かったのを思い出して・・・というのを思い出して、それにしました。何だか僕、引用ばっかりなんですよ。
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- いえいえ、ご自身の引き出しですから。ファックさんはやっぱり文章力が素晴らしいですよね。昔ファックさんが衛星のご自分のコーナーに書いたコラムがもの凄く面白いですよね。「アメリカ」が好きです。
- FJ
- 何ですか?それ。
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- えっ。主人公が習字の道具を持って、アメリカらしい町にまで来てしまう話ですよ。
- FJ
- 覚えてませんね・・・信じられない思いで聞いています。
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- 「男色」も良かったです。二人のブサイクがディープキスしながらおまんじゅうを食べる話。
- FJ
- あ、それは覚えてます。褒められた記憶があります。
岩戸山ほぼ2畳大学
京都 岩戸山町にあるほぼ2畳スペースにあるキャンパスです。毎月第2月曜日19時?オープンキャンパス開催(公式サイトより)
青が繋がっていく
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- FJ
- 言ってみれば、青い話なんですよ。「お母さんとファック」は。それをごまさんが果実にした、そんな感じです。
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- お客さんに、どう感じてもらいたいですか?
- FJ
- 何というか、思い出話を盛っているような気がして、少し警戒してはいるんですよね。普通にやりたいんです。とか言って当日はノリノリで感傷的なお芝居しているかもしれないけど。とにかく、思い出話をするという事で閉じた世界じゃないですか。それをもうちょっと公にするために、色んな人物を通して僕の話になるんじゃないかと思います。僕の話をごまさんがグレードアップして(いっぱい嘘も入って)、サリngROCKさんの絵にも引っ張られて、一日演出家のドラマベラーターの方にもお話を聞いて。それを僕が思い出して喋ると。
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- 深みが出るでしょうね。
- FJ
- 出たらいいですよね。
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- そうして積み重ねた全ての関係性が出るんじゃないでしょうか、きっと。色んな人の仕事や意見が入っているものだと思います。
- FJ
- 大体、5〜60分程度のお芝居になります。横山ショーキーさんに生演奏をお願いしていて、僕は出演者なんですけど音響や照明の操作も同時にやります。自分だけいいカッコしたいんちゃうかという気分になってきますけど、でも、面白いと思います。僕の青さの全てを・・・全てじゃないかな、一部を詰め込んだ話になっていると思います。
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- 楽しみです。
質問 西尾 佳織さんから ファックジャパンさんへ
質問 蓮行さんから ファックジャパンさんへ
どこへ向かったら?
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- 先日の劇団衛星の珠光の庵 。とても面白かったです。これは僭越ながら、ファックさんの芝居が大変上達していたなと感じまして。型が洗練された演技の先の、何だか丸みを帯びているような、そんな佳境に来ていたと思います。
- FJ
- ありがとうございます。
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- そこで伺いたいんですが、ファックさんは今後、どこに向かいますか?
- FJ
- どこに向かったらいいんですかね?自分がもう下手くそ過ぎて見てられないんですよね。
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- 私は全然そう思わないですけど。
- FJ
- いや、もう使い物にならないと思っているんです。他人の気持ちはもちろん、役柄の心情とか想像出来ないし。今回の一人芝居も、自分の事ならセリフにして表現出来ると思ったからだし。
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- なるほど。
- FJ
- 怒ったりとかの感情を、何か、ただの体(てい)だと思ってたんですよ。でもコントロール出来る人はいるんですよね。他の役者のセリフに対して、身体が反応して感情表現する、そういう技術を周りがやっているのを見て・・・いい仕事をするなあと思うんです。ホンマ自分、出来ひんなあと。どこへ向かったらいいのやら、という気持ちです。
珠光の庵 京都公演「珠光の庵〜真の巻〜」
公演時期:2014/3/15〜16。会場:乾窓禅院。
コントロールできひん
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- 前回のインタビューから5、6年経ちましたね。その間の、ご自身で考える大きな経験は。
- FJ
- マレビトの会の「王女A」の通し稽古をしたんです。僕はその時、段取り上必要なセリフを忘れてしまって。何やったかなあと思って、プロンプが入って、で次の動きに移れたんです。その時ですね。
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- というと。
- FJ
- 「何やったかなあ」って悩んだんですけど、それは頭だけで、首から下は次の段階に行こうと準備していたんです。
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- 身体が勝手に準備していたと。
- FJ
- そうですね。直後、そのズレにちょっと、自分でも付いていけなかったんです。それぐらいビックリした経験でした。その時以降、俯瞰で見るという言葉の意味が分かりましたね。ホンマに俯瞰で見るんだなと。ズレを大きくしたり小さくしたり、他にも沢山の回路が見えてきて、やってて凄く興奮しましたね。こういう事をみんなやっているんだ、って思いました。
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- なるほど。
- FJ
- これまで演出家の人たちが言っていた事はホンマなんやと思いましたね。セリフを言う時に、そういう体(てい)じゃなくて、「そうなる」んや、って。台本で指定されている順序でセリフ言えるやんと思ってたんですが。そういうコントロールが出来るようになるのって難しいですよね。でも、そうなるように近づけていきたいです。
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- でも、役者としての仕事を完全にコントロール出来るようでありたいと。
- FJ
- どういうアクセスでもいいんですけどね。
気恥ずかしさについて
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- FJ
- どうしていこうかなあ。どうしていったらいいですかね?
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- ファックさんのらしさを保ちつつ、お客さんに、ファックさんの心の奥が伝わるような、お客さんが自然に感じられるような共感を呼べるような、そんなファックジャパンがいいんじゃないですかね?いや、一人芝居は確実にそうなると思うんですけど。
- FJ
- そうなるかなあ・・・いや、なる!あ、そうだ。ラップの会というのをやってるんですよ。田中遊さんと男肉団長と壱劇屋の大熊さんと。流行せたいです。関西小劇場で落語が流行してますけど、その内みんなラッパーネームを持つように。
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- そこに居合わせてみたいですね。
- FJ
- みんな恥ずかしがるんですけど、実際恥ずかしいんですけど、でも楽しいですよ。
MOLESKINEのノートブック
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
- FJ
- ありがとうございます。前回は何かの小物入れでしたよね。
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- 今回は違います。どうぞ。
- FJ
- (開ける)あ、ノートや。
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- MOLESKINEのノートブックです。
- FJ
- 使わせて頂きます。