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あごう さとし

演出家

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河瀬 仁誌(劇団ZTON)
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ロック

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今日はですね、WANDERING PARTYの事を伺って行きたいと思いまして。まずは作品の事なのですが、どういう背景がワンパの作品にあるのかなと。2年ぐらい前から、いわゆる時代物をされていたように思いますが。
吾郷
何でかな。僕ね、ああいうのは学生の時に一回やった事あるんですよ。演劇を始める時に当たって刷り込みがあって。それは、MOPのマキノノゾミさんがお書きになられた「ピスケン」っていう作品を高校生の時に演出したのが初めてで。それが、大正時代のいわゆるピカレスクロマンで、主役が中途半端な強盗さんなわけですよ。
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ええ。
吾郷
その、要するにダメな人なんですよ。その人を中心に、青猫というカフェの中での人間模様で。いつかそういうのを自分でも作りたいと思っていたんですね。それが元々のモチベーションになっていたと思います。
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なるほど。
吾郷
あとは、歴史とか好きなんですよ。近代に入ってから、外国の文化が入ってくるでしょ。その混ざり合った感じが、魅力を感じて。
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劇研での公演を拝見しました。
吾郷
「21世紀旗手」?
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はい。非常に面白かったです。玉音放送から始まったから時代物かと思いきや、Apple社製品=Powerbookとかが出てくるし。その混ざり合った感じが良く出ていたなと思います。
吾郷
そうそう(笑う)。あれはね、自分としてはちょっとした転機となった作品で。それまでは石川啄木とか大杉栄とかを取り上げても、その時代の枠組みでやっていたので。突飛な事をやろうとはそんなに思っていなかったんだけども。だけど、それが段々窮屈になってきて。何かその、伸び代が無い気がしたし、単純に面白くないなと思っていたし。で、今この録音に使っているiPodのようなものを放り込めないかと思って。
__
それでiPodや、iBookを。
吾郷
時代物は、お話の筋も最後とか虐殺されたり、人物の目的も革命とかですしね。そういうの好きだったんですけど、大変じゃない。我々の経験の中にはないものだし。話をもっと身近な所に落とし込みたいなと。だから、とりあえず太宰治がiPodを買いにいくという話にしようと。
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いや、設定からもうロックンロールですね。
WANDERING PARTY

2001年8月、結成。京都、大阪を中心に活動。「芸術と娯楽」は同義であることを追求すべく、現代美術、身体表現を換骨奪胎し、笑いと涙を誘う演劇づくりにいそしむ。(公式サイトより)

WANDERING PARTY11th.20世紀旗手

京都公演:アトリエ劇研協力公演。日時:2006年1月27〜29日。会場:アトリエ劇研。東京公演:タイニイアリス演劇祭参加公演。2006年2月17〜19日。会場:タイニイアリス。

舞踏

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その、次はダンス公演だと聞いて。ちょっと意外な気がしていたんですが。
吾郷
実はね。うちの劇団員の結構な人数が日本舞踊やってるんですよ実は。
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ええー!?
吾郷
意外でしょ(笑う)。舞台上でそういう教養のあるところを全く見せていない所とか。男はね、全員やってますよ。
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へえー。
吾郷
僕もやっていたんですが、途中から休みがちになって。行けなくなって。
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意外ですね。
吾郷
今度、先斗町の歌舞練場で発表会やるんですよ。
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それが3月の。
吾郷
いや、それは舞踏なんです。そこで、丁度1年前くらいに、精華小劇場が出演されたアトリエ劇研の公演ビデオも一緒に見せてもらったんですよ。それで興味を惹かれて、川村悟さんに紹介して頂いたんですよ。ダンサーの方のちょっとした動きとか、些細な仕草とか、そういうのがいいなと思って。その時はダンスをやろうとは思ってなかったんですが。
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なるほど。
吾郷
うちの役者はこういうのは出来ない。こういうふうにはいてられない。そういう感じを受けたんですね。
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その、そういう感じというのは、細やかさとか。ダンサーが指を動かすだけなのに感じる、あの動きのことですかね。
吾郷
そうそう、何か、体全体に行き渡ってる感じがあるよね。
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分かります。
吾郷
僕らはもっと、雑におると。
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蛍光灯の前で手を振ると残像が残りますが、ああいった、ぎこちない。
吾郷
そうそう、南斗水鳥拳が始まるみたいな(笑う)。そういう動きの、切欠だけでも得られないかと。それで、うちの劇団でワークショップをやってもらえないかと、紹介していただいたんですよ。稽古場で何度か来ていただいて。それこそ歩くトレーニングとか。そのうち、向こうから一緒にやりませんか、というお話を頂いて。という事なんですね。こういう経験を、僕らなりに咀嚼して、自分達のものにしていきたいなと。
香月人美&WANDERING PARTY舞踏公演『聴かせてよ、愛のことばを』

公演期間:2007年3月20〜21日。会場:アトリエ劇研。

精華小劇場

大阪市難波。元・精華小学校をリノベーションした劇場施設。

川村悟

詩人・演出家。ポエトリー・リーディング、舞踏の演出・構成・振付など、多方面の作家活動を展開。

香月人美

舞踏家。1997年、詩人河村悟の演出作品『オフィーリアの遺言』に主演。孤立した記憶に呼びかける、詩のカオスを抱えたダンスパフォーマーとして注目を浴びる。

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今後、ワンパはどんな道筋をされていくのでしょうか。それとも、ワンダリングする、みたいな。
吾郷
名は体を現す、みたいな。ワンダリングはしてますよ、ずっと。何でもそうなんですけど、自分達の生きる場所を探すのは難しいじゃないですか。演劇に限らず、本質的な場所を見つけるのは、とても。どうなんだろうな・・・。こないだの12月で30になったんですよ。いよいよいい年で。
__
ああ、はい。
吾郷
高橋君はいくつ。
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25です。
吾郷
25。僕ね、25の時に会社を辞めてワンパを始めたんですよ。・・・何だっけ。道筋ね。いや、本当にね。毎日考えてます。例えば、いい芝居をやって良い評価を得たいというのが当然思っている所なんですね。これは皆思っていることだと思うんですが。僕はどうにかして生業にしていきたいなと思っていて。最近は、そういう意味ではラジオの台本を書かせてもらったりとか、芸術大学の演劇のクラスにお手伝いで呼んでもらったりとか、ちょっとはそういう技術が金銭に変わっていく事が、ないではないんだけれども。集団をプロ化するのはまたレベルが違うじゃないですか。
__
ええ。
吾郷
劇団員が9人いるんですよ。彼らをどうにかするには、もう気が遠くなるんですよ。まあ、あとは作品をどうやって良くするか、しかないですね。

両立

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今後、作品的にはどのような構想があるのでしょうか。
吾郷
まあ、言えばストレートプレイというか。まあ、そんなに変な事はやってなかったんですね。割とそのまま、みたいな。そこに、何層かのレイヤーを積み上げていく、というのが今考えていることで。ベースの上に、例えば身体的な表現が一枚加えられないだろうか、とか。
__
というのは。
吾郷
例えば、現代芸術家達の作品って実は娯楽性が高いなと感じていて。アートだけどもスノッブな感じもしなくてね。芸術性と娯楽性がいい形で両立していると思うんですよ。
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これはポップなモノだと言われて鑑賞しても、クラシックな説得力を感じますよね。
吾郷
そうそう。伝統的な技法の上に成り立ってたりとか。そういうイメージを演劇の中にもレイヤーとして載せられないかなと。こないだは絵画を舞台奥にばんと置きましたが。
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あれこそ、後ろに絵があって前にお芝居があって。レイヤーですよね。
吾郷
あれもね、舞踏をちょっと取り入れたんですよ。ああいう方法を、もう少し精度良く、組上げていって作品に奥行きを与えられないだろうかと。
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また、各レイヤーを一枚ずつ剥がしていって楽しんだり、考えていったりと。
吾郷
うん。そういう、アート性をきっちりと両立出来ればなと。それが望みです。

ソーサー

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実はプレゼントがございまして。どうぞ。
吾郷
すみません、恐縮です。開けてしまってもいいんですか?
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あ、どうぞ。
吾郷
(開ける)おお。これは。
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これは、コップとかを載せるソーサーですね。
吾郷
ああー。下の。あ、そうですか。ああー。
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どうぞ。
吾郷
こんなオシャレなものを。
(インタビュー終了)