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あれから

灯座
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本日はよろしくお願いいたします。ENGEKI FRONT+で拝見した時から「この方々は素晴らしいな」と、今日のインタビューを心待ちにしておりました。まずは皆さんの近況から伺えますでしょうか。主宰のあららぎさんから。
ぽぽ 
私は大学を休学中で、春から卒業研究が始まります。微生物の研究で、細胞の作用を見るために、遺伝子を欠損させたものを作って調べる予定です。
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非常にチャレンジングなご研究ですね。続いて、はまださんは。
はまだ(以降、はま) 
はまだ(以降、はま) 僕は去年3月に大学を中途退学して、今は葬儀屋さんなどアルバイトを掛け持ちして生計を立てています。来年どうなるかは……自分でもあまり考えられていないというか、考えようとできていないかもしれません。考えなきゃいけないんですけどね。
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ありがとうございます。副主宰の仲程さんは。
仲程 
去年10月いっぱいで大学院を辞めまして、今はフリーターです。修士1年で辞めて、今は派遣でバイトをしたりしながら過ごしています。
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研究室にいらした時はどのような研究を?
仲程 
音信号処理の研究をしていました。信号処理の観点から音空間を捉えていこう、という内容です。
灯座

滋賀県を拠点とした劇団です。今創りたいものを全力で、私たちらしく。みなさんの心に"灯(あかり)"を灯せるよう活動しています。灯座(ともしびざ)です

ENGEKI FRONT+

公演期間:2025/6/28~29。会場:THEATRE E9 KYOTO。上演団体:劇団ゆうそーど。『せまいね、刹那!』 社会の居ヌ『立ツ鳥跡の天秤に鳴ク。然レド生きた空は在ル。』 ベイビー、ラン『君のからだは川になる』※追加販売分終了 灯座『あの日の忘れ物』

「野外」の起源

灯座
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結成経緯をお聞かせください。
ぽぽ 
もともと立命館大学(BKC)の「劇団月光斜TeamBKC」にいたメンバーなんです。卒団時に「まだ演劇を続けたいね」となって立ち上げました。
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そうだったのですね。
ぽぽ 
最初は2024年の京都学生演劇祭で、その後にENGEKI FRONT+、その後に2025年の京都学生演劇祭、先月C.T.T.に出たという流れです。
仲程 
名前を付けたのは僕です。「灯(ともしび)」には、お客さんの心も明るくできるような灯になるという想いを込めました。最終的にしっくりきたのが灯座。「座」には同じ志を持った集まりというニュアンスも込めています。
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皆さんのパフォーマンスは演劇のジャンルを超えていると感じます。特に客いじりと言いますか、お客さんに積極的に話しかけていくスタイルが高い可能性を秘めていますね。
ぽぽ 
ありがとうございます。
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月の住人や地底人など、人外のキャラクターが共通して登場する印象ですが、こだわりがあるのでしょうか。
ぽぽ 
絶対に人外を出したいわけではないんです。ただ、その方が面白いかな、作りやすいなという感覚があって、結果的にそうなっています。
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学生時代からそのスタイルだったのですか?
ぽぽ 
いえ、学生時代は既成脚本でしたし、お客さんと喋ることもありませんでした。2024年の演劇祭で初めて野外劇をやることになって、「せっかくなら野外でしかできないことを」と思って。スイカ割りや花火をして。
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舞台上でお鍋を作る演出も力強いですね。頭から生えているキノコを具材にするのは、いくらなんでも強すぎるのかなと。
ぽぽ 
一同 (笑う)
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IHとはいえ熱源を扱い、目の前でお鍋が出来上がる。観客の集中力を高める凄まじい力がありました。「本当に食べるんだ」という一体感。あの熱量は忘れられません。
ぽぽ 
最初はキノコから始まったんです。漫画とかの「ジメジメして頭からキノコが生える」表現、あれが実際にあったらおもろいなと思って。生やすなら調理したい。なんで鍋になったんだっけ。最初はパスタも候補にあったよね。
仲程 
雪を降らせる演出があったので、雪ならお鍋だろうと。僕が単にお鍋が食べたかった、というのもあります。
ぽぽ 
花火の時、煙の匂いが客席まで届いたのがすごく良かったと言われて。
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視覚だけでなく嗅覚でもお客さんを共犯者にする。いい仕掛けですね。テキストも非常に面白いです。セリフ回しがいちいち印象的で、少しアニメチックなコンテクストがありつつ、細部まで思考が行き届いているのが伝わってきました。
ぽぽ 
ありがとうございます。
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特にC.T.T.でのループものの演出。3回目でセリフを省略し始めたのは「頭が良いな」と思いました。お客さんは次のセリフが分かっているし、何よりループの中で彼らが異常になっていく奇妙さを際立たせていました。メリットとデメリットが合致した映画的な演出で、素晴らしかったです。
ぽぽ 
嬉しいです。ありがとうございます。
C.T.T.京都vol.126

C.T.T.京都vol.126[Nakayubi./灯座] 2026年1月23日(金)〜24日(土)

灯座

脚本・演出の裏側と、実験的な「強制力」

灯座
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テキストはあららぎさんお一人で?
ぽぽ 
私が書いています。
仲程 
他のメンバーはアイデア出しやネタ出しを手伝う感じです。あららぎ曰く、キャラがいれば自然と言葉が出てくるみたいで。僕たちは設定詰めをちょこちょこ手伝うくらいで、セリフ回しなどは完全に任せています。
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演出も世界観の作り込みもすごかったです。地底人のタロちゃんが人間を飼っていて、完全栄養食で生かされているという。
ぽぽ 
ありがとうございます。
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バルーンアートに扮したレジスタンスの二人がタロちゃんを暗殺しようと試み、お客さんも巻き込まれていく。そして灯座の大きな特徴である「お客さんに話しかける」スタイル。
ぽぽ 
京都学生演劇祭で、試しにお客さんに話しかけてみたんです。そうしたら終わった後に褒めていただけて。「あ、これが自分たちの強みなのか」と気づいて、今のスタイルにシフトしました。
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C.T.T.では賛否両論でしたね。私は大好きでしたが。皆さんご自身としては、あの公演はどのような体験でしたか?
ぽぽ 
うーん、分かってはいたんですが、なんかやりすぎちゃったかなと思っています(三人笑う)。お客さんに舞台に上がって踊ってもらうというのは。でもC.T.T.だからこそ、どこまでいけるか実験的な気持ちでやりきってみようと。
仲程 
「強制力がある」という感想もありましたね。そこを確かめる実験的な側面もあるにはありました。
ぽぽ 
どこまでお客さんを引き込めるか。ただ、客席の空気感とこちらの強制力の塩梅、それを深く考え始めるきっかけになりました。
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確かにお客さんとしては、来てくださいと言われれば行くしかない面もあったかもしれません。
仲程 
舞台に上がって踊るアイデアの入り口は、徳島の「阿波おどり会館」なんです。あそこは公演の最後にお客さんも上がって阿波おどりを踊るターンがあるんですよ。そこから着想を得ました。
ぽぽ 
今は、ちょうど良い塩梅を探しています。乗れない人にどうおもろいと思ってもらうか。でも、できれば全員を巻き込みたい気持ちも捨てきれなくて。
はま 
同じ演目でも学生演劇祭とC.T.T.では場所の違いを強く感じました。でも正直、僕はあの場を楽しんでいました。皆で円になってそうめんを流すのを眺める空間が楽しかったし、お客さんも微笑ましい目で見てくれている感じがあって。
ぽぽ 
最初に囲まれた時はめちゃめちゃビビりましたけど(笑う)。
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あえて反省点などは。
はま 
二人が言っていた通りバランスというか。どうしても好みがあるジャンルなので、合わない人には本当に合わないんだなと肌で感じました。好き嫌いがはっきり分かれる。そこで自分の視野が広がった気がします。その反省をどう解釈するか、一緒に考えていきたいですね。多少の不安もありますが、答えがない世界ですから。
灯座

ご縁

灯座
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そうしたスタンスを共有している皆さんですが、改めて、はまださんと灯座のご縁を教えてください。
はま 
2024年の演劇祭で実行委員をしていて、そこで灯座の皆と知り合いました。E9の時に初めて一緒にやった感じです。もともとは京都橘大学の劇団洗濯氣に所属していました。
ぽぽ 
実行委員をしていた時に、「変なやつがいるぞ」と思ったんです。良い意味で(笑)。「この人面白いな、おかしいな」と思って仲良くなりたくて、誘ってみました。
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C.T.T.の最後、家を壊されるシーンがありましたよね。あの時の悲愴感はもはや面白かったしいいオチでした。
灯座

なめられる強度

灯座
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お客さんとのコミュニケーションは好みも分かれますが、舞台から話しかけられるのは唯一無二の体験で、鍋以上に強いと感じます。それは書かれたセリフの面白さと、強い「愛嬌」に支えられていると思うんです。灯座さんはここ数年で相当な、壱劇屋に迫るくらいの愛嬌を持っていると感じますが、その正体は何なのでしょうか。
ぽぽ 
あまり自分では愛嬌があると思ったことがなくて。いろんな人に言っていただけるんですが、自分でも何なんだろうと。
仲程 
愛嬌と「親しみやすさ」がイコールなのかどうか。キャラクターとしての愛嬌と、無意識に感じさせてしまう愛嬌……。「話しやすい」とはまた違うのかなと思ったりします。
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「話しかけやすさ」=「なめられやすさ」?
ぽぽ 
なめられている自覚はあります。常日頃(笑う)
仲程 
悪い意味での「なめられ」ではないと思うんですけど。自分はずっと出ずっぱりなので俯瞰出来ていないですが、結構アドリブも多くて素に近いんです。そこが警戒心を持たれにくいのかな。内面で違うことを考えているとお客さんも警戒してしまいますよね。C.T.T.でゲストスピーカーの渡辺さんが言っていた「混乱の共同体」のように、こちらも混乱していることが伝わると、逆に愛嬌というか安心感に繋がっているのかなと。
はま 
確かに、自分たちよりお客さんの方が主導権を握っている感があります。責任を持った握らせ方というより「自分達が動かしてやろう」という気持ちにさせているというか。愛嬌と呼んでいるものは、親しみやすさやいたずら心から生まれた何かなのかな、と感じます。
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何らかの心の余裕を持っているお客は感じやすいのかもしれませんね。舞台上のものから自ら楽しみを見つけてやろうという余裕。
灯座

「誰も置いていかない演劇」

灯座
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灯座はもはや特殊なジャンル。大切にしていきたいことありますか。
ぽぽ 
私は、もっと「誰も置いていかない演劇」をしたいんです。まだ完璧ではないですが、演劇が「生」であることをもっと活かして、「こんなこともありなんだ」という観劇体験を届けたい。役者と観客ではなく、みんなでこの場にいるんだ、という一人も残さない空間を作りたいです。
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そこに入るお客さんが、事前にコンセプトを了解している必要はありそうですね。いや、そんな敷居は設けなくてもいいかもしれないけれども。
仲程 
このコンセプトを受け容れられない人も含めて、置いていきたくないという気持ちもありますね。
ぽぽ 
その前提がなくても受け入れられるようになりたい、という気持ち。
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ぜひその気持ちを持ち続けてほしいです。「強度を低くせよ」と言っているのと同じようなものなので。お客さんを拉致してフェリーに乗せてもいいんですよ。
仲程 
C.T.T.で「気を遣ってしまった」との声があって。こちらが全責任を負うつもりでいてるので、そこをいかにお客さんの安心感に繋げていけるかを考えないといけないなと。
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学生演劇祭のノリから一段階上げるとなると、「入りやすさ」以外にも何かある気はしますね。
はま 
以前シアターE9でやった時、ある感想で「お客さんをナメている感じがして、そこが良かった」というのがあったんです。
ぽぽ 
良い意味でね。
はま 
今回は結構ガチガチに「話しかけるぞ!」という感じでしたが、お客さんを頼りにしているぞ、仲間だぞ、という感じが次のヒントかも。その「なめている」という距離感が、面白さのひとつの要素かも。
仲程 
人間関係の研究してるみたい。
ぽぽ 
どう踏み込んだら許されるのか。
はま 
入り込めないお客さんとどう向き合うかという課題についても、あえて余計に向き合うのをやめる、というスタンスもあるかもしれません。あえて「なめてかかる」、意図的に「距離感を誤る」。
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それはライブ性として重要なスタンスかもしれませんね。

質問 武士岡大吉さんから灯座さんへ

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前回インタビューさせていただいた武士岡大吉さんから。「ドラマについてどう思いますか?」と。テレビではなく概念的な意味でのドラマ。武士岡さんは「ジオラマ」、枠があるからこそ外側の宇宙までつながっているんだと仰っていました。
仲程 
ドラマというのは自身の内に生まれるものなのかな、という気もします。
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それはあるかもしれませんね。
仲程 
武士岡さんの「枠」という言葉を借りれば、ドラマは他者との関わりで生まれるのかもしれません。感情も外の影響で形作られるもの。自己確立の中で、自分をジオラマの中に置く感覚が、ドラマの「枠」を作ることにつながるのかなと思います。
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枠を強く意識する、という作用があるのでしょうか。
仲程 
ウガチャンカークルタンをみんなで踊った時も、最初は困惑していたはずなのに、踊り終わった瞬間に勝手に友達になったような世界がありました。その空間にいないと起こらない心の動きなので。そこで感じるものだと思います。一緒に踊ってくれたら楽しいし、迷いがあってもそれはそれだし。
ぽぽ 
私はみんなで踊ったら楽しいから踊ってみようというぐらいの気持ちだった。ドラマの定義については、まだ考えがまとまりきりませんが・・・。

完全栄養食

灯座
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最後に、あららぎさんたちの「これから」についての抱負をお聞かせください。
ぽぽ 
まだまだやりたいことがたくさんあります。頑張ります。
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これからも応援しています。
ぽぽ 
はい!ありがとうございます。
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今日はお話を伺ったお礼に、プレゼントを持ってきました。
ぽぽ 
ありがとうございます!
仲程 
わあ、すごい、ありがとうございます。
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こちらは灯座の皆様へ。地底人タロちゃんの色をイメージしました。
ぽぽ 
えー、タロちゃんのイメージカラー!
仲程 
タロちゃんカラー、何色だろう
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まずは開けてみてください。
はま 
うわあ、すごい、めっちゃ入ってる。
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完全栄養食です。飴です。
ぽぽ 
完全栄養食だ!すごい。
仲程 
綺麗ですね。
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劇中で客席に渡されたビー玉の光る玉もイメージしました。
ぽぽ 
わあ、可愛い!
はま 
ウガチャンカークルタンですね。
仲程 
これで願い星を流すんですよね。
灯座
(インタビュー終了)